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熱海みやげの宝物

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盗賊の世界でいう〔嘗役(なめやく)〕とは、一味の押し込みに関係なく、ひとり、諸国の町や村をめぐり歩き、自分が所属する盗賊一味の盗めに適当な商家や民家を探しまわる、これが役目だ
その語源についてはよくわからぬが、ひとむかし前の仕組が大きい盗賊たちは、かならず嘗役の一人や二人を抱えていたものだそうな

熱海みやげの宝物〔あたみみやげのたからもの〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和五十年七月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(十三)』
TV 第ニシーズン47話『熱海みやげの宝物』(91年3月27日放送)
脚本:野上龍雄
監督:高瀬昌弘

鬼平犯科帳〈13〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈13〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/09
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第2シリーズ 熱海みやげの宝物スペシャル [DVD]

鬼平犯科帳 第2シリーズ 熱海みやげの宝物スペシャル [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
その日も、日暮れ前に、長谷川平蔵は手ぬぐいをさげ、宿の内湯へ下りて行った

いつもなら宿を出て、本湯へ入りに行くのだが、今朝から雨が降りしきっているので、おもいとどまったのである

平蔵夫婦と相模の彦十におまさ、それに小者の弁吉の一行が、豆州・熱海の温泉へ来てから、もう一月に近くなっていた

将軍ひざもとの大江戸で火付盗賊改方・長官をつとめ、四百石の旗本である長谷川平蔵宣以ならば、当然、熱海の本陣〔今井半太夫〕方へ泊まるべきであったが、そこは平蔵らしく、身分も名も隠し、

「江戸の、日本橋・檜物町に住む儒者で、木村忠右衛門一行」

というふれこみにし、本陣から海辺の方へ、坂道を少し下った北側にある〔次郎兵衛の湯〕に泊っていた

あと数日で、師走(陰暦十二月)へ入ろうというのに、熱海の暖かさは格別のものだ、此処で年を越してもよいと、おもったこともあったほどだが、体力が回復するにつれて、寒風が吹きつのる江戸の冬が、なつかしくさえおもえてくるのだ

底に大きな石を敷きつめてある三坪ほどの浴槽へ、樋の口から温泉が絶間もなくそそぎこまれ、あふれ出ている

天井の高い浴舎には、平蔵ひとりきりであったが、

「もし・・・・・・長谷川さま・・・・・・」

湯けむりの向こうから、低い、しわがれた声がした、

「おお、彦十か、入って来い」

「ごめんを・・・・・・」

裸になった相模の彦十が、湯けむりを割って、浴槽の縁へあらわれたとき、

「どうした、何か、あったのか?」

と、平蔵が尋(き)いた

早くも、いまの彦十の声の調子がいつもと変わっていることに気づいていたのである

「それが、長谷川さま・・・・・」

肋骨(あばらぼね)の浮いた、渋紙のような肌をした老体を隅に沈めながら、彦十が、

「むかし、上方の、高窓の久兵衛お頭のところで、嘗役をしていた利平治というのが二人連れで、この宿屋へ入(へえ)って来ましたよ」

と、ささやいた

「嘗役の利平治に、もうひとり、連れがあるというのが気になる。おまさには、いったのか?」

「いえ、まだ・・・・・・」

湯けむりが、ゆらいだ

それから間もなく・・・・・・

当の利平治が浴舎へあらわれたとき、すでに、平蔵と彦十の姿は消えていたのである


利平治には、

「馬蕗(うまぶき)」

という異名がある

馬蕗とは、古いむかしの言葉で、牛蒡(ごぼう)の別名だという、「ねえ、うめえことをいうじゃごぜえませんか。なんとなく風流で、いかにも牛蒡くせえや」

と、相模の彦十が平蔵にいった

長谷川平蔵は、浴舎から出て、長い渡り廊下を自分が泊っている部屋へもどって行く馬蕗の利平治を、物蔭から見とどけ、

(なるほど・・・・・・)

と、おもった

顔や姿の、何も彼も、細くて長いのである

平蔵は、利平治の姿が渡り廊下の向こうに消えるのを見とどけ、別棟になっている奥の客座敷へもどった

夕餉の膳がならんでい、彦十・おまさに弁吉までも顔をそろえている。夕餉のときには、こうして、みなが共に食事をすることになってい、小者の弁吉などは恐縮しきっていた

夕餉が終わって、弁吉が先へ引き取り、つぎに、おまさと彦十が出て行った。三人は小廊下をへだてた別の小間を二部屋つかっている

小廊下を出たとき、彦十がおまさに何かささやいた

おまさの顔が、緊張した

「な・・・・・・江戸へ着くまでは、奥方さまにいわぬがいいぜ、心配をなすってはいけねえからな」

「わかりましたよ、おじさん」

「帰ったら、すぐに手配をたのむ」

「よござんす」


そのころ・・・・・・

馬蕗の利平治は、連れの男と、まだ酒をのんでいる

連れは、色白の、でっぷりと肥えた、おとなしそうな三十男で、利平治同様、どこから見ても堅気の商人(あきんど)であった

この男も、利平治と同じ高窓一味の盗賊で、もっぱら引き込み役をつとめている横川の庄八だ

「お前さんと、こうして、いっしょに旅をするようになってから、どれほどになるかね?」

と、利平治がいった

「さようで・・・・・・もう三月になりますよ」

「すると、高窓の久兵衛お頭が卒中で亡くなってから、半年になる・・・・・・」

「さようで」

「七十を越えて、あの世へ旅立ちなすったのだから、まあ贅沢はいえないが・・・・・せめて、若いお頭の病気がよくなるまで、生きていてもらいたかったねえ」

「まったく・・・・・・」

「お頭が亡くなんなすったとき、私は旅に出ていたし、どうすることもできなかった。それが、残念でたまらないよ、庄八どん」

「私どもでは、どうすることもできませんでした。ですから、お前さんを探して、一時も早く、このことをお知らせしなくてはとおもいましてね・・・・・・」

「うむ、庄八どんが、たしか、大黒屋という旅籠に泊っていて、二階から街道を見おろしているときに、私が通りかかった。あのとき私は、足をのばして、草津まで行くつもりだったのだよ」

「そのまま、京へお入んなすったら、とんでもねえことになりました。あいつらは、お前さんが京へもどるのを、手ぐすね引いて待ち構えていやがったのですからねえ」

「お前さんのおかげだ。恩に着ますよ」

「何をいいなさる」

「何処かで病んでいなさる若いお頭を探し出し、一日も早く、高窓の一家を束ねてもらわぬことには、どうにもならない」

「さようで・・・・・・」

「その上、私は、あいつらに、つけねらわれているのだから、たまったものではない」

「いのちがけで、お前さんの身をまもらせていただきますよ」

「たのむよ庄八どん・・・・・・ああ、すこし、酔ったようだ」

この、二人の会話の後半を、相模の彦十は縁の下へもぐっていて聞いた。もっとも跡切れ跡切れにではあったが・・・・・・

さいわいに、雨音が彦十の気配を消してくれた

しばらくして、馬蕗の利平治は寝床に入り、たちまちにねむりこんだ

それを見すまして、横川の庄八が手ぬぐいをさげ、部屋を出た

庄八が浴舎へ入ったとき、彦十の姿は縁の下から消えている

浴舎には、だれもいない

庄八は肥体を温泉に沈めた

そのとき、浴舎の戸が開き、男が一人入って来た

男も庄八も、しばらく黙っていたが、やがて、男が、

「庄八どん、どうだね?」

ささやいた

「まだ、わからねえよ」

「どうして・・・・・・どうしてだ。わからねえはずがねえじゃねえか」

「それがわからねえ。利平治のやつ、おれを頼り切っていて、今日も、おれを座敷へ残し、ひとりで、ここの湯へ入った。その隙に念を入れて利平治の荷物を探って見たが、どこにも見当たらねえのだ」

「三月もかかって、何をしているのだ?」

「なあ、富造。高橋の旦那につたえてくれ、どうも利平治は、一件の物を身につけてはいねえようだ、とね」

「それじゃあ、何処に隠してあるのだ?」

「それがわかれば、苦労をしねえよ。高橋の旦那は?」

「小田原にいなさるよ」

「え・・・・・・京にいなさるのではなかったのか?」

「旦那も待ちきれなくなったのだろうよ。なにしろ、利平治爺つぁんの一件物は大したものらしい。高橋の旦那でなくとも、お盗めする者なら、だれでも涎をながして欲しがるだろうよ。先ず、安く見つもっても、五百両が相馬の宝物だ」

「ちげえねえ」

「よし・・・・・・ともかく、お前の言葉を高橋の旦那へつたえておこう」

「たのむ。それにもう一つ、行方知れずの若いお頭の居所がわかれば、利平治をおびきよせることができる。利平治は、そのとき、一件物を若いお頭へゆずりわたすつもりだぜ」

「よし、わかった」

雨の音が、いつしか消えている。。。


〔主な登場人物〕

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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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馬蕗の利平次(いかりや長介)

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相模の彦十(江戸家猫八)

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おまさ(梶芽衣子)

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久栄(多岐川裕美)

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高橋九十郎(伊藤敏八)

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横川の庄八(鶴田忍)

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長助(小島三児)

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板垣軍次郎(堀田真三)

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小沼の富造(高峰圭二)

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次郎吉(日高久)

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赤井助右衛門(早崎文司)

与惣松(広瀬義宣)
念仏(伴勇太郎)


〔盗賊〕
・高橋九十郎:越前・福井の浪人あがりの盗賊。高窓の久兵衛の「軍師」などといわれた。四十前後の年配で、五年ほど前から久兵衛の手もとにいたが、一度盗めに参加した際、盗金の運搬から、押し込むまでの手配り、盗賊たちの配置・分担などを九兵衛の代わりに指揮して、みごとに成功し、久兵衛の信頼を得た。九兵衛亡き後、上方在住の配下二十八名を、わが手に引き入れた


〔商家〕
・伊豆屋:小沼の富造が泊まっていた豆州・熱海の旅籠

・扇屋:日本橋の石町三丁目にある宿屋。高窓の二代目・久太郎がいると思われた

・桔梗屋:利平治と平蔵が泊まった大磯の旅籠

・常陸屋権右衛門方:久栄とおまさ、弁吉の一行が泊まった藤沢の旅籠


〔料理帳・本〕
麦飯に大根の味噌汁。鰈の切身を味濃く煮つけたものを、
「うまい、うまい」
と、平蔵は二度もおかわりをし、飯を三杯も食べてしまってから、
「われながら、おどろいたな」
あきれ顔になったのを見て、利平治が、おもわず吹き出した



〔料理帳・ドラマ〕

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鮑の酢貝、平蔵、熱海の旅館で注文
亭主「いつぞやのお話の目黒不動尊前の料理屋、何とかいいましたな」
平蔵「伊勢虎か?」
亭主「おうおう、それそれ。そこの亭主が自慢したのと、これと比べていかがでございます」
平蔵「これならな、勝るとも劣らねえ」
亭主「あ~やれやれ。やっと安心いたしました。浅利や蜆ならともかく、鮑まで江戸前がいいと言われたら、この熱海の名が泣きます、はい。じゃあ、夜のお膳にはこれを」
平蔵「おっ、頼んだ。おめえな、酢貝だぞ、酢貝。塩でよく揉んで、酢で洗い、盛りつけたところへ、酢をさっとかける。そこにおろしわさびを添え、鮑の喰い方はこれに限るわな。思っただけで涎がたれてきた」

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鰈の煮付け、平蔵一行、小田原に向かう途中の茶店で
平蔵「居候ならそっと出すところだがな、もう一膳、いや、な、実に鰈の煮付けがうめえ」

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握り飯、探索の一行、山中で
猫殿の講釈「握り飯はおむすびとも言うが、これはな、関東と上方では形が違う。どう違うかと言うと、上方のは俵型で黒ごまをまぶすが、江戸では丸めた三角で塩で握る。どちらも美味い。美味いと言えばな、米の美味さがしみじみとわかるのが、この握り飯だ。いやぁ、全くもって、ありがたいもんだ。まぶす材料を変えただけで、様々に変化する。いい女がそうだな。ほんのちょっと化粧を変えただけで、まるで別人のように変わる。おむすびは、つまりいい女だ。味噌、塩、醤油、胡麻はもとより、海苔、ちりめんじゃこ、昆布、たらこ、沢庵、わさび漬け、、、」


〔ドラマでのアレンジ〕
小田原藩の役人と平蔵を探しに来た佐嶋忠介一行のエピソードはドラマオリジナル。また、原作では二代目高窓の久太郎は扇屋の女あるじ・お峰のむすめ、お幸と夫婦同然の暮らしをしており、盗賊から足を洗っていた。さらに、実はお峰と馬蕗の利平治が出来ていたというくだりがあるが、ドラマでは描かれていない。


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はにかんで行こう

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  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • メディア: DVD



『おひさま~大切なあなたへ~』(2011)
作詞:岡田惠和
作曲:渡辺俊幸
歌唱:平原綾香


NHK朝の連続テレビ小説『おひさま』が終わってしまいましたねえ

信州・安曇野・松本を舞台に、戦前から戦中戦後と激動の昭和を生き抜いたひとりの女性の半生を描いたドラマでした

主人公・須藤陽子(のちに丸山陽子)が、母の紘子の療養のため東京から安曇野へ一家で引っ越して来るところから物語りは始まります

さすがに、幼少から現在までですから三人で演じられてます

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幼少期の陽子(八木優希)

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本編のヒロイン・井上真央ちゃん、かわいいっ!

。。。から見てたわけじゃなく、『ゲゲゲの女房』、『てっぱん』の流れで見ていたわけなんですけど

『ゲゲゲの』みたいに平和記念式典の中継を途中で打ち切ってクレーム殺到というようなこともなく、

東京大空襲から復興する東京が3.11と重なったようで好評で、

けっこう、視聴率もよかったみたいですよ

そして、現在の陽子さん

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丸山陽子(若尾文子)

家族から相手にされず、頭にきて安曇野へ車をぶっ飛ばしてきて、たまたま陽子のお蕎麦の店にやってきた東京の主婦・原口房子

彼女に現在の陽子が昔話を聞かせるという構成でお話は進みます

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原口房子(斉藤由貴)

他の女優陣もなかなか豪華でしたな

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須藤紘子(原田知世)
陽子の母。もともと体が弱く、安曇野に転地療養したが、心臓の持病で、陽子が小学校の行事で山に登っているときに亡くなる
「おひさまはね、みんなを、世界を明るく照らすことができるのよ
女の子は太陽なの。陽子の陽は、太陽の陽」

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高橋夏子(伊藤歩)
陽子の尋常小学校のときの担任。その後、教師となった陽子の同僚となる
同僚になったときに、まるっきり年取ってないのはいかがなものかと(笑)

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丸山徳子(樋口可南子)
松本の蕎麦屋「丸庵」のおかみ
女学校時代の陽子と安曇野の蕎麦畑で出会う。その後、息子の和成の嫁として陽子を迎える

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相馬(秦野)真知子(マイコ)
陽子の女学校時代からの親友
「安曇野の帝王」と呼ばれた資産家・相馬剛三の娘。女をみくびった発言をした英語教師・飯田小太郎に反発し英語のテストを白紙で出す。罰として命じられた便所掃除で、便所同盟じゃなく白紙同盟を陽子、育子とともに結成する。「自分の生き方は自分で決めたい」と父・剛三に反抗したときも須藤家の便所にたてこもる。
陽子の兄・春樹が初恋の人

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筒井育子(満島ひかり)
真知子と同じく陽子の同級生
見栄っ張りなところがあり、東京女子大学に落ちた後、出版社に勤めると上京。実は露天で手紙の代筆業をしていた。東京大空襲に逢い、命の恩人の医学生・上原に恋をするが、育子をかばい重傷を負った上原はやがて亡くなる。その後小さな出版社に採用される
陽子の二番目の兄・茂樹とは最初はからかっていたが、将来を約束する仲となる


、、、という感じですが、『おひさま』と言ったら、やっぱり、タケオでしょう

陽子さん以外、三人で演じているのはタケオだけですからなぁ

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幼少期のタケオ(勝隆一)

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宮本タケオ(柄本時生)
須藤家の近所の農家の息子
陽子とは尋常小学校の同級生で、出会った時から密かに陽子に想いを寄せており、見守り続けていた。戦地から帰還して、思い切って陽子に告白するも、既に陽子は結婚しており、あえなく失恋

そして、現在のタケオ

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現在のタケオ(犬塚弘)

う~ん、現在のタケオは犬塚さんもいいんですけど、、、柄本明さんに演じて欲しかったなぁ

タケオの母・宮本ハルを角替和枝さんが演じているので、両親と競演ってことになったのに

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タケオと母・ハル(角替和枝)

やっぱり、タケオにつきますなあ(笑)


陽子が妊娠したときに、夫の和成さんが「狸の置物にしか見えない」と言っておりましたが、、、

教員になって以来ひっつめ髪にしている真央ちゃんは、、、松本明子にしか見えない!(爆)

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最後に、最初の頃、陽子が母親の紘子と安曇野の水神様にお参りにいくシーンがあるんですが。。。

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これって。。。どう見ても。。。ねえ。。。

放送しちゃってるけど、、、、いいのか!、、、NHK、、、では!!!!また!!!!













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Papi

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Love?

Love?

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Island
  • 発売日: 2011/05/03
  • メディア: CD


最新アルバム『Love?』から二枚目のシングルカット『Papi』のPVです


Jennifer Lopez 『Papi』(2011)


ふんぎばれ、ふんぎばれ、や、ですよ、パピ

わっきばれ、わっきばれ、や、ですよ、パピ

ふうむ、これはどこかで聞いたような曲

と思ったら、、、『めんつゆ』のブレークダンスの曲ではないか

予告編だったんですかね(笑)


恋愛がうまくいっていなくて、がっかりしている風情のJLO

アパートの管理人?のリサから、「恋が戻ってくるよ」と型のクッキーを勧められます
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「ちょっぴり、かじるんだよ」というリサの忠告にもかかわらず、まるかぶりのJLO
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食い意地のはってる女だなぁ(笑)

翌朝、、、
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JLOの周りに異変が。。。
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男たちが。。。ついてくる、ついてくる
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JLOに渡そうと花を奪い合う男ども

車に乗り込み、怪訝そうなJLO
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気づけよ、勘の悪い女だなぁ(笑)

フルーツをあげようとするやつや、子犬をプレゼントしようとするやつ

果ては、車の前に立ちはだかるものも、、、

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ついに、車からひきずり出されてしまうJLO
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まわりを囲まれて
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でも、、、手で制すると、、、
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止まる。。。おもしれ~

そして、、、
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みんなで
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ダンシング(笑)

恋人が現れて、騒動はおさまりますが。。。
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最初のスマホの男と違うじゃん、、、では!!!また!!!

『めんつゆ』の記事はこちら

はにゃげ

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ひっぱれの舞姫が、ブラビの『タイミング』に華麗に挑戦

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途中からビビアンが出てきて、、、

最後のポーズを
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きめっ!

最初のころ、「ヒッパレ」には自分の持ち歌は歌わないという不文律があったんですけどね~

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歌い終わってからのインタビュー

ビビアンが突然笑い出したわけは、、、
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三宅さん、はなげが出てた(笑)

天然だなぁ~


ビビアンの以前の記事はこちら













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http://hine1118.blog55.fc2.com/blog-entry-177.html

Countdown

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4

4

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 2011/06/28
  • メディア: CD


おめでたで幸せ一杯という感じのBeyoncéですが、、、

アルバム『4』から『Countdown』のPVが公開されました

Beyoncé 『Countdown』(2011)

60年代から80年代のポップ・カルチャーをビヨンセが演じるということで、内容盛りだくさんで楽しめるPVです

最初、ビヨのクローズアップから始まります

なんでも、英国のミニ・スカートの女王・ツイッギーのメーキャップを参考にしているそうなんですが、、、

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そう言われても、わかりません(笑)

全身黒タイツで、手を時計の針のように動かすシーン

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これはオードリーの映画『パリの恋人』(1957)ですな

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カラフルなレオタードに帽子、『パリの恋人』はファッション界が舞台でした

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連続写真のような、、、ヒールの色が変わってるんですね

場面は一転して、オーデションの現場、これは映画『Fame』(1980)、バックダンサーの踊りは『ウェストサイド・ストーリー』(1961)を模倣しています

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ビヨのメークはB.B.ことブルジット・バルドーを意識しているとか、、、

ふうむ、これはそんな雰囲気ですね、おなかが、ちょびっとめだってます

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さらに、おなかが成長しております

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ちらっと、おちりのサービス

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こちらは映画『ドリームガールズ』(2006)でも演じたダイアナ・ロスですな

ダンスの練習シーンに椅子も出てきたとなると、、、

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ジェニファー・ビールスの映画『フラッシュ・ダンス』(1983)で間違いありません

そして、最後は笑顔で、、、

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きめっ!

ひとつ忘れておりました、、、日本のほこる。。。

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欽ちゃんばしりを、、、では!!!!また!!!!





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どうも、、、美川憲一です(瀑)

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鯉肝のお里

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鯉肝のお里〔こいぎものおさと〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十七年十月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(九)』
TV 第三シーズン48話『鯉肝のお里』(91年11月20日放送)
脚本:田坂啓
監督:小野田嘉幹


鬼平犯科帳〈9〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈9〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第1・2話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第1・2話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
月も星もない暗夜であった

凩(こがらし)が空に鳴っていた

牛の草橋へかかった女が、

「おや・・・・・・?」

と、つぶやき、手にしたぶら提灯を橋板の一角へさしつけて見た

橋板に、若い男がひとり、ぐったりと横たわってい、顔へさしつけられた提灯にちからなく眼を開けたが、ものもいわぬ

「お前さん、どうしたのさ、躰のかげんでも悪いのかえ?」

と、女のほうから声をかけた

「う、う・・・・・・」

「どうしたえ?」

「は、腹がへって・・・・・・うごけません」

女が、ふき出して、

「なあんだ、そうだったのかえ」

若い男は、饅頭笠をくびにかけ、髷(まげ)のかたちもわからぬほどの蓬髪で、洗いざらしの木綿縞の着物の裾を端折り、つぎはぎだらけの股引、素足にすり切れかかった草鞋をつけている。その傍に、縄で括った炬燵のやぐらが二箇、ほうり出されたかのように置いてあった

「兄さん、立てるかえ。立てるなら、ちょいとお歩き、歩けたらあたしの後からついておいで。ついて来たら、何か食べさせてあげよう」

いうや、後をふり返りもせずに、女が牛の草橋をわたって行った

この女、名を、

〔鯉肝のお里〕

といい、火付盗賊改方の女密偵・おまさも、

「見たことはないが、何度も名をきいている」

ほどの女賊である


「来年の花どきごろから仕度にかかってもらうつもりだから、そのつもりでいてくれ」

と、念を入れられているお里だが、その間は、じゅうぶんに羽をのばし、好きなものを食べ、好きな博奕をたのしみ、好きな男を抱いて暮すつもりでいる

現に今日も・・・・・・

お里は行きつけの化粧品屋で、湯島切通し坂下の〔丁子屋〕の手代・徳次郎を、上野不忍池のほとりにある出会茶屋〔月むら〕へさそい出し、たっぷりと若い男の肌を楽しんできた

むろん、徳次郎へは相当の〔小づかい〕をやる。つまり、女のほうで男を買うわけだ。お里にとっては、これがたまらなくおもしろく、たのしみなことであった

このごろ江戸へ来ると、お里は、三ツ橋とは眼と鼻の先の、柳町の横町に住む煙管師・松五郎の小さな家に泊まりこむ

七十に近い松五郎は、以前からの独り暮しで、尾張町四丁目の煙管問屋〔倉田屋〕へ品物をおさめ、大事にされているほどの腕をもっているが、二十年前までは〔長虫の松五郎〕とよばれて、盗賊界でもきこえた男だったのである

(まさか、松五郎さんのところへ、こいつをつれても行けないし・・・・・・)

歩みつつ、お里はうしろを振り返って見て、くすりと笑った

炬燵やぐら売りの若い男が、ふらふらと後からついて来ている

犬の遠吠えが、どこかでしている

橋のたもとの、京橋川を背にして、

〔のっぺい汁・いちぜんめし〕

の掛行灯が見えた

ここは〔大根や〕という飯屋だ。土地(ところ)の者で知らぬものはいない

〔大根や〕は、中年の亭主夫婦に小女がひとり、小さな店だが、なかなかに繁昌をしていた

ひとしきり、たてこんでいた客が去って、お里が大根やへ入ったときは、土間に面した入れこみの畳敷きの片隅に、何やら行商の小荷物を傍にした埃くさい女がこちらに背を向け、熱いのっぺい汁をすすっているだけだ

自分の後から、のっそりと、大根やの土間へ入って来た炬燵やぐら売りの若者に、

「来たね、約束だ。たんとおあがり」

お里が、やさしげにいった

「すんません」

若者は、汁と飯へかぶりついた

「お前、名は何というのさ」

「い、岩吉・・・・・・」

岩吉は、あっという間に汁を三杯、飯を七杯もつめこんでしまうと、

「雪隠(せっちん)は、どこかね?」

小女にきき、土間の奥へ入って行った

さ、それからだ

それから、いつまでたっても出て来ない

ずいぶんと長く便所に入っているようだ。お里は尚も待っていたが、ついにたまりかね、小女を手まねきし、

「雪隠へ行った兄さんは、どうしたの?」

と、きいた

小女は困惑の表情で、土間の奥の板場をふり返った

「かまうもんかい。あたしが、あの女にいってやるよ」

気色ばんだ女房の声がきこえたのは、このときである

そして、つかつかと肥った女房が土間へあらわれ、お里の前へ来て、白い眼でにらみつけた

「ちょいと、雪隠へ行った・・・・・・?」

いいかけるお里へ、大根やの女房がぴっしゃりと押しかぶせた

「裏から帰しましたよ」

さすがに、お里も声を荒らげ、

「お前さん、ずいぶん勝手なまねをするじゃあないか」

すると女房が、興奮して、

「あんな・・・・・・あんな世間知らずの、まじめな若い者をたぶらかそうなんて、罪が深いじゃありませんか、え、おかみさん、そうじゃありませんか」

「この馬鹿、何を勘ちがいしていやがる」

ぐいと一突き、突き飛ばした女房が土間へ尻餅をついた、その顔へ小判を一枚たたきつけて、

「勘定だ。もし釣銭があったら、血の道の薬でも買っておのみ!!」

ぱっと身をひるがえし、外の闇へ消えてしまった

と・・・・・・

すぐに、その後から、入れこみの片隅にうずくまっていた小間物行商らしい女が、

「ここへ置きましたよ」

勘定を置くや、これも外へ走り出て行ったのである

この女、密偵のおまさであった。。。


〔主な登場人物〕

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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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鯉肝のお里(野川由美子)

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長虫の松五郎(垂水悟郎)

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岩吉(安藤一夫)

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大根や女房(石井富子)

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新助(山内としお)

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おまさ(梶芽衣子)

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伊三次(三浦浩一)

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大滝の五郎蔵(綿引勝彦)

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久栄(多岐川裕美)

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佐嶋忠介(高橋悦史)

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沢田小平次(真田健一郎)

徳次郎(島英臣)


〔盗賊〕
・〔白根の三右衛門〕:常陸から野州・上州へかけて跳梁を重ねている盗賊。鯉肝のお里の頭


〔商家〕
・奈良屋:神田明神前の呉服屋。大根やの女房の息子が働いていた

・真綿屋:新右衛門町にある奈良屋の得意先。ここの女房が大根やのせがれにちょっかいを出した

・〔伊勢屋直次郎〕方:駿府の仏具問屋。二十七年ほど前、舟形の宗平が初鹿野の音松のところにいたときに、ながれ盗めの長虫の松五郎が手伝いに来て、押し込んだ

・〔黒木屋三右衛門〕:水戸城下の旅籠。白根の三右衛門が主人としておさまっていた


〔料理帳・本〕
橋のたもとの、京橋川を背にして、
〔のっぺい汁・いちぜんめし〕
の掛行灯が見えた
ここは、〔大根や〕という飯屋だ。土地の者で知らぬものはない
自慢の〔のっぺい汁〕がうまいし、酒も出す
近辺の商家の店員たちが、店じまいをしてから空腹をみたしたり、大名屋敷の仲間どもが酒をのみに来たりする
こうした深夜営業の店が、当時の江戸の町には諸方にあった
二人は、太鼓橋の傍の鰻屋へ入って、旧交をあたためた
宗平は老いて、盗人宿の番人
松五郎は足を洗って煙管師
それなのに、こだわりもなく酒をくみかわし、鰻に舌つづみをうって語り合い、飽くことを知らなかった
鯉の肝というからには・・・・・・
鯉を料理するとき、うっかり青肝・苦肝などとよばれる胆嚢をつぶしてしまうと、苦味と臭味を消し去るのが容易でない
その鯉肝を異名にもったお里という女賊は、相当なしたたかものといってよい



〔料理帳・ドラマ〕

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のっぺい汁、お里と岩吉、大根やで
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「のっぺって言うんだ、これ、おれの田舎では」
「そうか越後の生まれかえ、お前さん」
「おふくろがよく食わせてくれた、里芋たんと入れて」

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鰻の蒲焼き、松五郎と五郎蔵


〔ドラマでのアレンジ〕
原作では松五郎の向かいの家におまさと大滝の五郎蔵が夫婦ものとして入居し、張り込むのだが、それが元で大事になる。ドラマでおまさと一緒に張り込むのは相模の彦十。これでは間違いが起こりようがない


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剣客

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剣客〔けんかく〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十六年三月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(六)』
TV 第三シーズン49話『剣客』(91年12月4日放送)
脚本:櫻井康裕
監督:小野田嘉幹

鬼平犯科帳〈6〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈6〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第1・2話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第1・2話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
大川(隅田川)が、中天からの春の日をうけてとろりとしていた

行き交う船の群も、なにか、ゆったりとした感じで川面をすべっている

左手に、その大川をながめつつさしかかった深川・清住町のあたり

町屋と松平陸奥守下屋敷の塀外をすぎようとしたとき、

横道から、これも編笠をかぶり、羽織・袴をつけた侍があらわれ、平蔵たちとすれちがうようにして河岸道を南へ・・・・・・

「忠吾。いま、横道から出て来た男の後をつけろ」

数歩、何気なく足をはこんでから、平蔵が、

「とまるな、歩け。あのさむらいの袖に血がすこしついていた。ついたばかりの血だ」

近くに霊雲院という大きな寺院の門前町もあり、深川から本所へ通ずる大道だけに人通りも多い

早くも人ごみにまぎれようとするくだんの侍の後を、木村忠吾は身を返して追って行った

長谷川平蔵は、松平屋敷の横道へ入って見た

(さわぎが、起った様子もない・・・・・・)

横道に、人影はなかった

「長官(おかしら)ではございませぬか」

平蔵のうしろから、声がかかったのはこのときであった

「や・・・・・・小平次ではないか」

いかにも火付盗賊改方の同心・沢田小平次なのである

「おぬし。今日は非番であったはずだな」

沢田小平次は、大きく張り出た額の下へ深く凹んでしまっているため眉毛と密着したかのように見える切長の両眼を細め、

「松尾先生の御見舞に、まいったのでございます」

と、こたえた

小平次は二十七歳。まだ独身で、老母と二人暮しであった

小野派一刀流の剣士でもある沢田小平次の師匠が、松尾喜兵衛であることは、平蔵も耳にしたいた

二人は横道の奥へ入って行った

前方の小旗本の屋敷の手前が原になってい、雑木がこんもりとしている

その木立の中に、松尾喜兵衛の小さな隠居所があった

沢田小平次が先に立ち、冠木門を入り、玄関から声をかけているのをききながら、長谷川平蔵はあたりに眼をくばった

(たしかに、あの侍の右袖に血がついていた。それもついたばかりの・・・・・・とすれば、この道をぬけて表通りへ出て来たあやつめ、きっと、このあたりで何か仕出かしたのでは?)

であった

そのとき・・・・・

松尾の家の中で、小平次の叫び声が起った

駆け込んで行った長谷川平蔵は、玄関の向こうの小間に、坊主あたまでまっ白な髭をたらした老人を抱きしめ、

「先生が・・・・・・先生が・・・・・・」

あまりの驚愕になすことを知らぬ小平次を見た

老人・・・・・・松尾喜兵衛は、顔の右半面からくびすじへかけて決定的な一撃をうけ、血みどろとなり、すでに息絶えていたのである


その翌日・・・・・・

松尾喜兵衛の遺体は、深川・猿江裏町の重願寺へほうむられた

十八名の旧門人と共に、沢田小平次は葬儀を立派にとりしきった

ところで、女密偵のおまさは相模の彦十と共に通夜から葬儀の日にかけて、大阪屋がさし向けてくれた女中二人と共にいそがしく立ちはたらき、焼香に来る人びとをもてなしたわけだが・・・・・・

棺が出てしまってのち、おまさは彦十へ、

「おじさん、これからあたし、御役宅へ行って長谷川様へ、ぶじすんだことを申しあげてこようとおもうのだけれど・・・・・・」

「あ、まあちゃん。あのねえ・・・・・・」

「え・・・・・・?」

「昨夜(ゆうべ)・・・・・・お通夜のときにさ。沢田さんをはじめ、御門人衆が、亡くなった松尾先生の敵討ちをすると意気ごんでいなすったっけ。あの敵討ちのはなしを長谷川さまのお耳へも入れておいたほうがよくはねえかえ。他の御門人衆はさておき、沢田さんはれっきとした火付盗賊改方の同心だ。うかつにうごかれても長谷川さまががお困りになるだろう。とにかく大(てえ)した意気ごみだったものなあ」

「そうだねえ、とにかく、申しあげておこうか・・・・・・。じゃあ、おじさん。あとをたのみましたよ」

と、おまさが亡き松尾喜兵衛の隠宅を出て、松平屋敷・塀外の横道を河岸の表通りへ出た

この日も、よく晴れていた

おまさは、本所二ツ目の軍鶏鍋や〔五鉄〕へ寄り、着替えをしてから、駕籠で役宅へ向かうつもりでいた

万年橋をわたるとすぐに大川へかかる新大橋のたもとに出る

(あ・・・・・・?)

おまさがはっとして、とっさにしゃがみこみ下駄の鼻緒をすけているようなかたちになった

折から新大橋をわたって来た男の顔に、見おぼえがあったからである

(あの男、たしかに滝尻の定七だ)

であった

(定七が江戸に来ているということは・・・・・・)

とりも直さず、首領の野見の勝平の〔お盗(つとめ)〕が江戸でおこなわれようとしている、と、見てよい

さいわいに定七は、おまさに気づいた様子もなく、万年橋をわたって清住町の方向へ行く。おまさは後をつけた。人通りが多いのは尾行しやすい。

藍玉問屋の大阪屋の表口の左どなりに〔三崎屋〕という蕎麦やがある。定七はここに入った

見とどけるや、おまさはためらうことなく、大阪屋の前をぬけ、横道へ入って、松尾喜兵衛の隠宅へ駆けつけた

「ど、どうしたんだ、まだ出かけなかったのかい」

「それどころじゃあない」

と、おまさが手早く耳うちするのをきいて、彦十も緊張した

「間ちげえは、ねえんだろうな?」

「あたしの眼に狂いはない。とにかく、あたしはあいつに顔を見知られている。だから、おじさんが後をつけておくんなさい」

「よし、わかった」

と・・・・・・

大阪屋の裏手から、飯炊きで市兵衛という大男が、のそのそと表通りへ出て来た

「三崎屋から出て来た男が、大男の飯炊きと立ちばなしをしはじめたぜ」

「あの男が定七だよ」

「あ・・・・・・飯炊きのうすのろが、定七と別れて、横丁へ入って行ったよ」

「定七は?」

「引っ返して行く、万年橋のほうへ・・・・・・・」

「さ、おじさん。しっかりやって下さいよ」

「合点だ」

と、相模の彦十は身を返して、彼方の人ごみに見えかくれしつつ遠ざかって行く定七の尾行にかかった

(どうやら、あいつらは大阪屋さんに押しこみをかけるつもりらしい。あの飯炊きは、野見の一味の引きこみにちがいない)

おまさは仙台堀にかかる上ノ橋を駆けわたり、今川町の駕籠屋へ急いだ。このことを長谷川平蔵の耳へいち早く知らせなくてはならぬ


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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石坂太四郎(中尾彬)

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定七(石橋正次)

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酒井祐助(勝野洋)

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久栄(多岐川裕美)

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天野甚造(御木本伸介)

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木村忠吾(尾美としのり)

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おまさ(梶芽衣子)

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相模の彦十(江戸家猫八)

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おとき(江戸家まねき猫)

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留吉(江幡高志)

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市兵衛(大橋壮多)

松尾喜兵衛(丘路千)


〔盗賊〕
・〔野見の勝平〕:駿河・遠江一帯を荒らしまわっていた盗賊。おまさが勝平のもとで、一年ほど〔引きこみ〕をはたらいていたことがある

・〔殿貝の市兵衛〕:野見一味。深川の大阪屋に飯炊きとして住みこむ


〔商家〕
・大阪屋新助方:深川・清住町の藍玉問屋。松尾喜兵衛が大阪屋の貸家に入り、大阪屋の世話をうけ、老後を養っていた

・大黒屋万之助方:小千住の町で只一件の足袋屋。


〔料理帳・本〕
「忠吾(うさぎ)よ」
と、編笠の中から長谷川平蔵が、これも平蔵同様の編笠・着ながしの同心・木村忠吾へ、
「腹が、へってきたな」
「はっ。それはもう・・・・・・今朝は、また格別にお早く、役宅をお出になったのでございますから・・・・・・」
と、忠吾め、得たりとばかりに生つばをのみ下し、
「万年橋のたもとに、桐屋と申して、ちょいとその、うまい田楽を食べさせます」
「くわしいな」
「は・・・・・・昨年、秋ごろより、深川、本所は私めの受けもちでございまして・・・・・・」
「深川、本所はむかしから、安くてうまいものがある土地(ところ)よ、なあ忠吾」
「は・・・・・・いかさま・・・・・・」
「女も、安くてうまい」
「へ・・・・・・それは、存じませぬことで」
やたらとへどもどする忠吾へ笑いかけつつ、平蔵が松平屋敷と清住町の町屋との間の横道を行きすぎた



〔料理帳・ドラマ〕
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かけそば、定七と市兵衛、三崎屋にて

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久栄特製のにぎりめし、酒井祐助、三崎屋張り込み中

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軍鶏鍋、おまさと彦十が準備中、五鉄にて
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おとき「長谷川さまが後でお見えになるそうです」
彦十「後で?どうしてお引止めしなかったんだよ。こうやって、軍鶏鍋の仕度をしてるっていうのによ」
おまさ「日暮れには、まだ汗ばむ程だっていうのに、おじさん。軍鶏鍋だなんて」
彦十「何も知らねえんだなぁ。今頃の軍鶏がどんなにね、効き目があるかってのをよ」
おとき「何に効くんです?おじさん」
彦十「んっ、そりゃ、お前、たまには奥方さまに立ち向かう力(りき)が」
おまさ「おじさん」
彦十「えっ、あっ、そうか」
おとき「立ち向かう力って何ですか?」
彦十「おめえには、まだ早えよ」


〔ドラマでのアレンジ〕
ドラマでは酒井祐助の仇討ちになってるが、原作では沢田小平次。
軍鶏鍋にまつわるやりとりは原作では平蔵と〔五鉄〕の亭主・三次郎の間でなされる。

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馴馬の三蔵

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居座り盗(つと)めというのは、たとえば料理屋の客となって酒飯をし、勘定をすませたのちに、小用にでも立つふりをして、屋内の一角に隠れてしまい、夜がふけてからあらわれ、外の仲間を引き入れるとか、または単独で盗みをする

こうしたときに、履物が残っていては怪しまれるので、そこは、いろいろと技巧を要するわけだが、たとえば、いったん履物をはいてから、

「お庭が結構だ。ひとまわりさせて下さいよ」

などといって、外から屋内へまわり込み、隠れてしまう

そうしたことは、居座りを得意とする盗賊にとって、

「わけもない・・・・・・」

ことなのである


馴馬の三蔵〔なれうまのさんぞう〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和五十三年七月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(十八)』
TV 第三シーズン50話『馴馬の三蔵』(91年12月11日放送)
脚本:池田太郎
監督:高瀬昌弘

鬼平犯科帳〈18〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈18〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第3・4話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第3・4話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
細い廊下を通りかかった小房の粂八の、酔いに火照った顔へ、初夏(はつなつ)の風が小窓から吹きながれてきた

(ああ・・・・・・いい陽気になったなあ)

何気なしに足をとめた粂八は、窓の外へ目をやった

そこは裏庭で、目の前の楠(くすのき)の若葉が午後の日ざしに光っている

大川(隅田川)の方で、船頭の唄う舟歌が聞こえていた

ここは、浅草の橋場の外れにある料理屋で〔万亀〕といい、二年ほど前に開業をした新しい店だが、大店(おおだな)の主人(あるじ)や、大身の旗本なども微行であらわれる。大川をのぞむ庭も、座敷の造りもなかなかに凝ったもので、料理もめずらしいものを食べさせるし、酒もよい

火付盗賊改方の密偵の中でも古参の粂八だが、表向きは深川・石島町の船宿〔鶴や〕の亭主におさまっている

近ごろの〔鶴や〕の評判はなかなかのもので、常客も少なくない

今日は、常客の一人で、同じ深川の猿江町にある足袋股引問屋の主人・小西屋久兵衛が、同業の伊勢屋太七と鶴やにあらわれ、

「さ、今日はひとつ、親方に舟をおまかせしますよ」

と、注文を出したので、粂八が猪牙舟(ちょきぶね)を漕ぎ、大川をさかのぼって〔万亀〕へ舟を着けたのである

ところで・・・・・・

小房の粂八は、このとき、小西屋と伊勢屋が酒を酌みかわしている二階座敷から小廊下づたいに厠で用を足し、もどって来たところであった

(ああ、いい風だ)

小窓から顔を出し、目を細めた粂八が何気なく視線を転じて、

(あっ・・・・・・)

あわてて、顔を引き込めた

裏手の左側に、万亀の物置小屋があって、その戸を引き開け、すっと中へ入った男の顔を、粂八は一瞬のうちに見て取った

男といっても、白いものが髪にまじった六十に近い老人なのだ

(馴馬の三蔵さんだ・・・・・・)

小窓に身を寄せ、粂八は、ぴったりと閉ざされた物置小屋の戸を見まもった

一度に酔いが醒めた粂八は、やや青ざめている

粂八の総身に、冷汗が滲んできた

馴馬の三蔵は、盗賊だったころの粂八にとって、

(忘れようとしても、忘れきれぬ・・・・・・)

盗賊なのである


一人ばたらきの三蔵は、合せて三度ほど、粂八の〔お頭〕だった野槌の弥平の盗めを手つだったことがあり、その折に、まだ若かった粂八の面倒をいろいろとみてくれたのだ

野槌の一味とは最後の盗めを終えたとき、馴馬の三蔵は、密かに粂八をよんで、

「粂八どん、お前さんも私のような一人ばたらきにならないか、どうだね?」

誘ってくれたことがあった

それまでに粂八は、馴馬の三蔵に、

「とんでもねえ迷惑を・・・・・・」

かけていたのである

粂八は、盗めと盗めの間の息ぬきに、江戸へ出て来て遊び暮すうち、芝・高輪の海手にあった〔川宗〕という小体な料理屋の女あるじで、お紋という女と知り合い、それこそ、

「無我夢中の仲に・・・・・・」

なってしまったことがある

ところが、この女には、品川宿にいる香具師の元締で鮫洲の市兵衛という恐ろしい顔役がついており、結局、粂八はお紋をつれて江戸から逃げた

そうするうちにも、野槌一味の盗めの期日がせまってきたので、やむなく粂八は、お紋を、

(そうだ、馴馬の三蔵さんにあずかってもらおう)

と、おもいついた

駿河(静岡)の岡部の宿場で、三蔵の女房おみのが小間物屋をしていたのである

この秘密の〔世帯〕を、三蔵は粂八にだけ洩らしてくれた

そこへ、粂八はお紋をつれて行き、匿ってもらうことにした

三蔵は、別の盗めに出た後だったが、おみのは、たのもしく引き受けてくれた

それから七日ほど後の夜ふけに、おみのの小間物屋が襲われ、おみのとお紋が惨殺死体となって発見されたという。おそらく、鮫洲の市兵衛の仕わざだったにちがいない

高崎での盗めを終え、岡部へ駆けつけた小房の粂八が、このことを宿場の人びとから聞いて知ったとき、お紋が殺されたことよりも、おみのが巻き添えになって殺害されたことのほうが、正直にいって辛かった

それから一年後に・・・・・・

三蔵が野槌一味の盗めに加わったとき、顔を合わせた粂八は、

「三蔵さん。何とも申しわけがねえ。とんでもねえことを、おれはしてしまった・・・・・・」

血を吐くようにいったとき、三蔵は、

「なあんだ。おみのといっしょに殺された女というのは、お前がつれてきたのか・・・・・・」

そういったきり、いささかも粂八を咎めようとはせず、また恨みがましい言葉を口に出さなかった

「ま、仕方もねえことだ。それじゃ別れるぜ。これから先、二度と会えるかどうか・・・・・・それにもう一つ、死んだ女のことは、きっぱり忘れるがいいぜ」

これが、別れとなった

それから十何年もたったいま、浅草・橋場の料理屋〔万亀〕の物置小屋へ消えた馴馬の三蔵を見たとき、

(あ・・・・・・三蔵どんは、居座り盗めをやりなさるつもりだな)

と、粂八は見て取った


それから間もなく、小房の粂八は、小西屋久兵衛と伊勢屋太七を舟に乗せ、引きあげることになった

「親方。すこし、顔が青いよ。気分でも悪いのかえ?」

「いえ、そんなことはございませんよ。旦那の気の所為でございましょう」

さりげなく笑った粂八は、

「先へ出ております」

この料理屋の舟着きへ出て行った

このとき粂八の肝(はら)は、もう決まっていた

いかに盗賊改方の密偵をつとめてはいても、

(馴馬の三蔵さんを、売るわけにはいけねえ)

密偵には密偵の義理がある。何が何でもお上のためにはたらくとはかぎっていない

(長谷川様、今度だけは、見逃してやって下さいまし)

粂八は、胸の底で手を合わせた

いましも、大川(隅田川)から猪牙舟が一つ、万亀の舟着きへ着いたところであった

これも、何処かの船宿から送られて来たらしい客が二人、舟着きへあがって来た

二人とも、立派な武家である

その一人の顔が、粂八へ笑いかけた

(あっ・・・・・・)

小房の粂八は、胃の腑へ焼き鏝(ごて)を突っ込まれたようなおもいがした

その武家は、ほかならぬ盗賊改方の長官・長谷川平蔵宣以(のぶため)であった。。。


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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馴馬の三蔵(金内喜久夫)

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お紋(伊藤美由紀)

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瀬田の万右衛門(高野真二)

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鮫洲の市兵衛(西園寺章雄)

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小房の粂八(蟹江敬三)

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沢田小平次(真田健一郎)


〔盗賊〕
・瀬田の万右衛門:上方から近江・美濃へかけて大きな盗みばたらきをする盗賊の首領で、盗みの世界では、「それと知られた・・・・・・」男


〔商家〕
・三好屋:海辺大工町の船宿。


〔料理帳・ドラマ〕
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けんちぇん汁、猫どのと忠吾、万亀で
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仲居「けんちぇん汁でございます」
忠吾「けんちぇん汁?けんちん汁ではないのか?」
猫どの「いや、けんちぇん汁なのだ。それが正しい。けんちぇんの『けん』は巻くと言う漢字。『ちぇん』は野菜を千に切るところから来る。けして、『ちん』ではないのだ。
そもそもは、精進料理だがな。細かくつきだしたる豆腐と千切り野菜をごま油でよおく炒め、これに醤油と酒で下味をつけたものを、湯葉で巻く。巻いた止め口を水溶きした葛粉を塗ってかたちを整え、さらに好みの味で煮含めたうえで、そこで椀にとる。それをぐらぐらと煮立ったすまし汁を注ぐというわけだ」


〔ドラマでのアレンジ〕
前半の鮫洲の市兵衛と粂八が出会うシーンと、最後に粂八が瀬田の万右衛門をお縄にするシーンはドラマオリジナル

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Dance Again

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Love?

Love?

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  • 出版社/メーカー: Island
  • 発売日: 2011/05/03
  • メディア: CD

4月2日にリリースされたJLOの新曲です

アルバム名はまだ明らかにされてないので、シングル・リリースのみかも知れません

PVは白黒のタイトル「Always remember... You will live, you will love, you will dance again」が表示されて始まります


Jennifer Lopez『Dance Again ft. Pitbull』(2012)

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サングラスにはげちゃびん、白いスーツの男がいる部屋を訪れたJLO

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部屋の天井にはオージー集団の有象無象が。。。

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天井に吸い寄せられたJLOはオージー集団の仲間入り

もともと太腿もあらわなスリットが入っているドレスなので、スカートを剥ぎ取られても、あんまり変わらないのですが、、、

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やはり、ドキッとしますなあ

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合間合間にはさまる銀の砂のキラキラ

このPVのもうひとつの売りはスパイダーマンキッスだそうです

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映画『スパイダーマン』の中でスパイダーマンのトビー・マグワイアとメリー・ジェーンのキルスティン・ダンストが雨の中かわすシーンですね

もっとも、映画とは男女、逆の位置ですが、、、

パクられるようになるとは『スパイダーマン』も偉くなったもんです

ダンスシーンのJLOのお相手は、24歳の彼氏Casper Smartだそうです

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どうりでJLOがノリノリのダンス(笑)

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おちりワシ掴み
う~ん、もうちょっとワシ掴みにして欲しかったなぁ

で、総括すると、、、、このPVの見所は。。。。やっぱり

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おちりぷらんぷらん

、、、だと、思うんですがねえ。。。どうでしょう?

、、、と、言うことで、、、では!!!!また!!!!

火つけ船頭

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火つけ船頭〔ひつけせんどう〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和五十ニ年五月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(十六)』
TV 第三シーズン51話『火つけ船頭』(91年12月18日放送)
脚本:安藤日出男
監督:井上昭

鬼平犯科帳〈16〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈16〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第3・4話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第3・4話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
冷え切った夜の闇が張りつめ、常吉の吐く息が白かった

(今夜は、ばかに冷え込みゃあがる。ああ、畜生。もう直きに冬なんだなあ・・・・・・)

月の無い夜半であった

常吉を乗せた小舟は、楓川の暗い川面をすべり、越中橋の下を潜って、右側の河岸へ着いた

舟からあがり、材木置場へ屈み込んだ常吉は頬かぶりをして、腰へ吊している太目の竹筒に触ってみた

竹筒の中には、たっぷりと灯油がつめこまれている

常吉は、火打石で火縄に火を点じ、これを左掌で囲うようにしながら、材木置場から河岸道へ出た

四ツ半(午後十一時)を、まわっていたろう

これから自分がすることをおもうと、常吉は全身が熱くなってきた

来年は三十になる常吉は、船頭であった

日本橋の北詰を東へ行き、小網町の河岸道へ出ると、日本橋川からの入り堀に架かる思案橋のたもとに〔加賀や〕という船宿がある

常吉は、そこの通い船頭で、深川・黒江町の裏店に、一昨年の春、いっしょになった女房のおときと住んでいる。まだ、子がなかった

(さて・・・・・・どこに、してやろうかな・・・・・・)

足音もなく、南鞘町と南塗師町の間の道を歩みながら、常吉は、あたりの気配に神経をくばっていた

今夜で、常吉は三度目の放火をすることになる

南伝馬町の大通りへ出る、一つ手前の細道を、常吉は右へ切れ込んだ

そこは畳表問屋・近江屋六兵衛方の裏手にあたる

(よし、ここにしよう)

と、近江屋の裏塀の裾へ屈み込んだ常吉、腰の竹筒を外した。中の灯油を撒き散らして火をつけるのだ

近江屋の裏塀の端に、裏手の出入口がある

そこへ、そこの潜戸のあたりへ、黒い影が二つ、三つとあらわれたのを常吉は見た

(な、なんだ、あれは・・・・・・?)

あわてて火縄の火を揉み消し、常吉は身を伏せた

黒い影の一つが潜戸を軽く叩いたかとおもうと、戸が内側から音もなく開いたではないか・・・・・・

(こ、こりゃあ大変だ。あいつら、盗人だ・・・・・・)

近江屋の裏口へ吸い込まれて行った黒い影は十五、六もあったろう

(ち、畜生め。とんでもねえまねをしやあがる・・・・・・)

自分(おのれ)が、とんでもないことをやりかけたことも忘れた常吉の胸に、激しい怒りがこみあげてきた

(ええ、畜生どもめ。どうしてくれようか、どうして・・・・・・)

身を伏せたままの常吉は、とっさに判断がつきかねた


この夏のはじめに・・・・・・

はじめて、室町の乾物問屋・伊勢屋へ放火したとき、常吉の心情が、きわめて不安定な状態にあったことはたしかだ

そのころ、常吉は、女房おときの浮気を知った。いや、その現場を、わが目に見た

自分の長屋の戸を開けて見て、常吉は立ちすくんだ

裸の男が、おときを組み敷いてい、おときの白い両腕が男のくびを巻きしめているではないか

男は、同じ長屋に独り暮しをしている西村虎次郎という三十がらみの浪人で、顔に二カ所も切傷の痕がある。何か、よくないことをたくらんでは飯の種にしているらしい

西村虎次郎は、そのとき、がたがたとふるえている常吉を見てから、ゆっくりとおときの躰をはなれ、悠然と身仕度をして、

「おい、常。文句があるならいつでも来い」

凄味のある低い声でいってから、外へ去った

翌朝になると、おときはけろりとして常吉の朝餉の仕度にかかったのだが、それですんだわけではない

いまのおときは、常吉を見くびってしまい、

「お前さんが出て行けというなら、いつでも出て行くよ。そのかわりね、西村がお前さんに何をするか知れないよ。その覚悟はついているのかえ」

むしろ、脅しにかかる始末なのだ

はじめてのとき、家へ帰るのもおもしろくなくて、加賀やに住み込んでいる老船頭の友五郎と酒をのみ合い、はじめは泊まり込むつもりだったが、

(いまごろ、おときのやつ、何をしているか知れたものじゃあねえ)

そうおもうと、居ても立ってもいられなくなり、ふらふらと外へ出た

どこをどう歩いたのか、わからぬうち、伊勢屋の横道へ出た

それと知った途端に、加賀やの客でもある伊勢屋又七の威張った顔をおもい出した

(畜生め・・・・・・)

むらむらとなった常吉は、提灯の火だけで、伊勢屋の裏口へ放火をしたのだが、火をつけて逃げて、はなれたところから見ていると、伊勢屋のあたりの空へ火の粉が吹きあがった。近くの普請場から鉋屑をあつめてきて火をつけたのがよかったものか、おもいのほかの火事となった

(ざまあ、見やがれ・・・・・・)

胸につかえていた、大きな鉛の塊りのようなものがすっと消えて、全身に衝つきあがってくる快い興奮は、これまでに常吉が経験をしたことのないものであった

その興奮を、今夜も味わうつもりでやって来たのに、

(と、とんでもねえことに・・・・・・)

なってしまった

見張りの盗賊の目がとどかぬ場所まで後退した常吉は、身を起し、近江屋の裏塀に竹筒の灯油を撒き散らし、火縄へ点け直しておいた火を紙片へ移して、灯油に濡れた塀へ火つけした。小さな焔が、たちまちにめらめらと塀を駆けのぼりはじめた

そこまで見とどけた常吉は、身をひるがえして走り出した


常吉は、近江屋の外塀へ火をつけてから逃げ、材木河岸まで来ると、材木置場の、その材木を積みあげた上へのぼって、近江屋の方をしばらくながめていた

火の粉も、すこしは黒い空へあがって、

(胸が、すっとした・・・・・・)

のであるが、そのときに材木置場へ数人の男たちが駆け込んで来たのだ

黒い影は八つだ

ひそひそとささやき合いつつ、彼らが暗闇の中で、何やらごそごそとうごいているのを、材木の上に身を伏せた常吉は、息を殺して見下(おろ)していた

すると、その中の一人が、別の一人へ、

「先生も、いっしょにお乗んなせえ、途中、危なくねえところで陸(おか)へあがんなせえよ」

こういうと、

「では、そうしてもらおうか」

こたえた。その男の声に、常吉は愕然となった

まぎれもない、女房おときを、

(盗み抱きにしやあがった・・・・・・)

浪人・西村虎次郎の声ではないか・・・・・・

西村浪人をふくめて、八つの黒い影は、材木置場の闇に消えた

常吉は、しばらくの間、身を起すこともできなかった。。。


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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常吉(下條アトム)

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おさき(竹井みどり)

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西村虎次郎(伊藤敏八)

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佐嶋忠介(高橋悦史)

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久栄(多岐川裕美)

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相模の彦十(江戸家猫八)

久助(北見治一)
およし(中條郷子)
島造(松本幸三)
関本の源七(徳田興人)


〔盗賊〕
・塚原の元右衛門:口合人。〔口合人〕とは、一人ばたらきの盗賊を諸方の〔お頭〕へ周旋し、周旋料をもらう

・関本の源七:南伝馬町の近江屋へ押し込んだ盗賊


〔商家〕
・伊勢屋又七方:日本橋・室町一丁目の乾物問屋。常吉が最初に放火した。伊勢屋は丸焼けになり、となり近所が五軒も類焼し、三人の焼死者が出た。

・尾張屋源蔵方:浅草の御蔵前片町の足袋股引問屋。常吉二度目の放火。逸早く奉公人が発見したので、小火(ぼや)にとどまった

・近江屋六兵衛方:南伝馬町一丁目の畳表問屋

・〔伊豆半〕:浅草の山谷掘の料理屋。常吉が客を送った先

・〔ひしや〕:茂森町の崎川橋の南詰の船宿。西村虎次郎がおときと逢引に利用

・〔増半〕:平野町の河岸にある〔どぜう鍋や〕。西村虎次郎が入る

・〔巴屋久兵衛〕方:富岡八幡宮・正面の広場の西側の角にある料理茶屋。上総屋伊之助が業者の寄り合いで利用

・上総屋伊之助:熊井町に店を構える水油仲買業。手代の松太郎ともども西村虎次郎に襲われかけた

・〔吉田屋源七〕:武州・草加宿の旅籠。主人の源七が盗賊の首領

・豊島屋利兵衛方:小舟町一丁目の明樽問屋。常吉が火付けしようとしたところを、盗賊改方の同心・小柳安五郎に取り押さえられる


〔料理帳・本〕
平蔵が入浴を終えて出て来ると、久栄が酒の肴の仕度をととのえ、侍女に運ばせ、居間にあらわれた
「鴨じゃな」
「はい」
鴨の肉を、醤油と酒を合わせたつけ汁へ漬けておき、これを網焼きにしては出すのは、久栄が得意のものだ。つけ汁に久栄の工夫があるらしい。今夜は、みずから台所へ出て行ったのであろう
それと、鴨の脂身を細く細く切って、千住葱と合せて熱い吸物が、先ず出た
「久栄。わしに、このような精をつけさせて何とするぞ?」
「まあ・・・・・・」
久栄は顔を赤らめた
四百石の旗本の、通常の暮らしならば、とてもこのような冗談を、配下の者の前でいうこともあるまいが、そこは火盗改方の役宅の気楽さであった
いちいち体裁にかまっていては、物事がはかどらぬ御役目なのである
「おいしゅうございますなあ」
吸物の湯気で鼻先を濡らしていた佐嶋忠介が、目を細めて、おもわずいった
八幡宮・門前には、日暮れから翌朝まで、葭簀張りの田楽やが四つほど店を出す
これを土地(ところ)の人びとは、
「石焼田楽」
と、よんでいる
大きな石を火で熱し、この上で豆腐だの芋だの、およそ、味噌を塗って火に焙ってうまいものなら何でも田楽にして、客に出す。むろん、酒はいくらでも出す


〔料理帳・ドラマ〕
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鴨の網焼き、平蔵と佐嶋忠介、役宅にて
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平蔵「この網焼きはなぁ、酒と醤油を合わせたつけ汁に浸して焼くんだが、このつけ汁に久栄の工夫があるそうだ」
忠介「奥方様、ひとつそのコツをお教え願えますか」
久栄「たとえ佐嶋殿でも、これは申し上げられませぬ。つけ汁の隠し味は、私一人の秘伝でございまする」

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夕餉、常吉とおさき、長屋にて


〔ドラマでのアレンジ〕
原作では常吉は『大川の隠居』に出ていた浜崎の友五郎の船頭仲間という設定である。口合人の塚原の元右衛門はドラマには登場しない。原作のおときはドラマではおさきになっている。常吉の処罰が原作とドラマでは異なる。

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http://hine1118.blog55.fc2.com/blog-entry-179.html

熊五郎の顔

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熊五郎の顔〔くまごろうのかお〕
初出掲載誌 『推理ストリー』 昭和三十七年二月号
角川文庫 『にっぽん怪盗伝』
TV 第三シーズン52話『熊五郎の顔』(92年1月22日放送)
脚本:田坂啓
監督:高瀬昌弘

にっぽん怪盗伝 (角川文庫)

にっぽん怪盗伝 (角川文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1972/12
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第3・4話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第3・4話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
その男が、お延の茶店へあらわれたのは五日前のことだ

その日は明け方から強い雨がふり出し、終日やむことがなかった

(お客も、もう来やしない。店をしめてしまおうかしら・・・・・・?)

暗い雨空に時刻もよくわからなかったが、そろそろ夕方にもなるだろうと思い、お延が店の戸をしめようとしたときであった

深谷の方向から来たらしい旅人が、よろよろと店先へ入って来たのである

男は、もどかしそうに背中の荷物を取り出し、笠と雨合羽をぬぎ捨てると、そのまま、苦しげに小肥りの躰を土間の縁台の上に折って、低くうめいた

「すみませんが、白湯をひとつ・・・・・・」

湯を持って行くと、男は、それでも人なつこそうな微笑をうかべて頭を下げたが、すぐにふところから丸薬を取り出した

薬をのみ、縁台に横たわっているうちに、男の蒼い顔はべっとりと脂汗に濡れ、うめきと喘ぎが只ならない様子になってきた

「これじゃあしようがありませんねえ。ま、奥へお上がりなさい。私、お医者を・・・・・・」

お延の気質としては捨てておけなかった

旅の男を奥の部屋に寝かせ、戸締りをしてから、お延は新堀の宿へ走って、医者を呼んで来た

「まあ、大したことにはならぬと思うが、今日は動かせないよ。ここへ泊めてやったらどうだな?というても、女ひとりの住居だから、それも、どうかな・・・・・・」

「いえ、そうなれば、私は市ノ坪の実家へ泊りに行きますから」

医者が帰った後も、男は苦しそうであった

雨は強くなるばかりである

市ノ坪へ行くつもりでいたお延も、日が暮れてはくるし、雨もひどいしで、もう面倒になり、

(こんな病人といたところで、別に・・・・・・)

この近辺でも、かたいのが評判でとおっている寡婦のお延であった

夜になった

お延も腰を落ちつけることにきめ、男の看病をしてやることにした

発熱に喘ぎながら、とぎれとぎれに男が語るところによると・・・・・・

男は信太郎という名で、旅商人だという。もともと上方育ちで、古着を商っているのだが、京・大阪からの新品も扱い、これを北国や信濃にある得意の客にとどけることもする。旅商人としては上等の部類に入るといってよい

まもなく、男はぐっすりと眠った

お延が、男の左の耳朶のほくろに気づいたのはこのときであった

(まあ、あんなに大きなほくろが・・・・・・)

翌朝になると、信太郎は元気を取りもどした

そうはいっても、まだ熱もいくらかあるし、食欲もない様子なので、お延は、もう一日、信太郎を泊めてやることにした

雨はあがり、空は鏡のように青く、あたたかい陽射しが街道にみちていた

奥に寝ている信太郎を古ぼけた枕屏風で囲い、店先との境の障子をしめきっておいて、その日も一日中、お延は、旅人や駕籠かきや、馬子などの客を相手に、茶を、うどんを、酒を、だんごを売って、いそがしく働いた

日が暮れかかった

お延は戸じまりをし、粥をたいて信太郎の枕元へ運んだ

「申しわけありません。とんだ御厄介を・・・・・・」

「いいんですよ、そんな・・・・・・さ、起きてごらんなさい」

だきおこしてやったとき、信太郎が、急に、うるんだ声で、ほとばしるようにいった

「おかみさん!!私はいま、死んだおふくろのことを考えていましたよ」

「まあ・・・・・・」

汗くさい信太郎の体臭を、頬にあたる呼吸を、お延はこのとき強く意識した

四年も、堅く立て通してきた後家暮しであった

「じゃあ、これで・・・・・・ゆっくりとおやすみなさい」

離れようとしたお延の手を、信太郎がつかんだ

「な、なにを・・・・・・」

「おかみさん!好きだ!!」

病みあがりとは思えない強い力であった

お延はだき倒され、男の唇が、首すじから喉のあたりへ押しつけられるたびに、躰中がしびれたようになった

「いけない。いけませんよ、そんな・・・・・・」

「好きなんだ、おかみさん。好きなんだ!!」

いやな男だったらはね退けるだけの気力は十分にもっていたお延だが、相手が明日にも旅立っていく男だという考えが、一瞬の間にお延をおぼれさせた

(だ、誰にもわかりゃしないんだもの・・・・・・私だって永い間ひとりきりで・・・・・・私だってつらかったんだもの)

急に、お延の四肢が火のついたようになった

お延は喘ぎながら、信太郎の首へもろ腕を巻きつけていった


「・・・・・・そういうわけでな。向井様のおいいつけで、おれが出張って来たというわけなのだ。山猫三次というやつは、雲霧一味のうちでも意気地のないやつらしい。越後でお縄になったとき、親分の雲霧はじめ仲間の者の人相なども、いくらか白状をしたということだ。これで江戸へ連れて行き、思いきり責めつければ、きっと一味の所在をも吐きだすに違いない」

江戸から十六里余りの道を、武州熊谷と深谷の間にある新堀の宿までやって来た山田藤兵衛が、お延の茶店へ立ちよって、そういった

「山田さま、そうなれば、州走の熊五郎も・・・・・・」

背も低いし、かぼそく見えるお延の躰が興奮にふるえている

茶店の外に控えている同心・手先たちにも、茶をくばりながら、お延は、ふっと、その人数の中に、死んだ夫の政蔵がまじっているような気がした

かつては政蔵も、山田藤兵衛の下について目明しをつとめていたのである

四年前の夏、政蔵は州走熊五郎の潜伏場所を突きとめ、七人の捕手と深川・亀久町の船宿へ踏みこんだ

だが、けだもののように暴れ狂う熊五郎の脇差(どす)に腹を刺され、政蔵は死んだ。しかも、捕手が迫る気配を知った熊五郎は、すばやく用意の頭巾をかぶって顔をかくすという心憎いしかたで、見事に包囲網を斬り抜け、逃走した

ひと足違いで駆けつけて来た山田藤兵衛は、足を踏みならして口惜しがったものだ


山田藤兵衛は茶代のほかに、紙包みの金をおいて立ちあがった

外へ行きかけ、山田藤兵衛はちょっと考えてからお延のそばへもどって来た

「お前も、もとは御役の者の女房だった女だ。しかも、いまは宿はずれの茶店のあるじ。道行くものに注意しておってくれい」

「は、はい」

「ここに、山猫三次が洩らした言葉によって書きとめた州走の人相書がある。念のために渡しておくから、よく読んでおいてくれい。宿場の町役人にも渡してあるが・・・・・・」

部下を従え、深谷の方向へ速足で去る山田藤兵衛を見送ったお延は、そそくさと店の中へ駆けもどり、亡夫を殺した憎いやつの人相書を読んだ

読むうちに、お延の顔色がみるみる変わってきた

無宿州走熊五郎

一、丈五尺三寸ほど

一、歳三十歳ほどに見ゆ

一、小肥りにて色白く歯並び尋常にて眼の中細く

一、尚、左耳朶に一か所、左胸乳首の上に一か所、小豆大のほくろ罷在候

その一つ一つが、みんな覚えのあるものであった

ことに、最後の一条がお延に強烈な衝撃をあたえた

(あのひとの左の耳たぶにも、たしかほくろが・・・・・・)

自分をだいた男の腕が、亡夫の政蔵を刺した同じ腕だとしたら。。。。。。


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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お延(音無美紀子)

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信太郎/洲走の熊五郎(高橋長英)

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和泉屋治右衛門(高城淳一)

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小房の粂八(蟹江敬三)

由松(岡田一恭)


〔盗賊〕
・雲霧仁左衛門:江戸市中ばかりか関東一帯を荒らしまわってきた大泥棒

・山猫三次:雲霧仁左衛門の乾分のなかでも四天王とかよばれた。享保十六年晩秋、潜伏中の越後で捕らえられた

・州走の熊五郎:同じく四天王のひとり。山猫三次と一緒にいたが、捕手の包囲を斬り破って逃げた

・木鼠吉五郎:雲霧一味。一昨年の春に捕らえられたが、江戸へ護送する途中で、六人の仲間をひきいた州走熊五郎に奪い返された

・因果小僧六之助:雲霧一味の四天王のひとり。目明しの政蔵が捕らえた


〔商家〕
・〔ささや〕:お延の茶店

・〔和泉屋治右衛門〕方:深谷宿の旅籠。主人の治右衛門は町年寄も兼ねている。お延の亡くなった母親が、永く和泉屋に奉公しており、現在はお延の下の弟が働いている


〔料理帳・本〕
道中の人も絶えたようであった。昼すぎになるまでに、急ぎの旅人を送った帰りの駕籠かきが二組ほど店へ入って来、酒とうどんで躰をあたためて行っただけである


〔料理帳・ドラマ〕
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粥、お延と信太郎、お延の自宅にて

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田螺のぬた、平蔵と粂八、沢田、深谷の旅籠にて
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このな、田螺がなかなかいける。んっ、んっ、うめえ、うめえ。なんでぃ、粂八も沢田も喰わねえのか?喰わなかったら、こっちへよこせ。いいから、こっちへよこせ。あー、ん、確かにな、こいつはちっと泥臭い。だから、この味噌味をきかせたぬたに限る。へっへっへっへっ、んー、うまいなこりゃ。

〔ドラマでのアレンジ〕
原作は短篇集『にっぽん怪盗伝』に収録された同名小説で、平蔵は登場しない。そもそも雲霧仁左衛門と平蔵とは時代が違う。
和泉屋治右衛門は原作では何かとお延母子を気にかけてくれるいい人だが、ドラマでは財力と地位にものをいわせて、お延を囲い者にしようとするいやらしい爺を高城淳一が好演している

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いろおとこ

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いろおとこ〔いろおとこ〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十九年六月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(十二)』
TV 第三シーズン53話『いろおとこ』(92年1月29日放送)
脚本:笠原和夫
監督:加島幹也

鬼平犯科帳〈12〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈12〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第5・6話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第5・6話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
その日の夕暮れに、盗賊改方同心・寺田金三郎は、本所二ツ目の軍鶏鍋屋〔五鉄〕で酒をのんだいた

雪催(もよ)いの、底冷えの強(きつ)い日だっただけに、五鉄の入れ込みの座敷には、早くから客がつめかけてい、軍鶏を煮る鉄製の熱気がたちこめ、汗ばむほどにあたたかい

「おや・・・・・・あれは、寺田さんじゃねえか。いつの間に来ていなすったのだ?」

と、五鉄の亭主・三次郎が、板場の格子の内から、入れ込みの片隅で黙念と盃をなめている寺田金三郎を見つけて、女房に尋いた

「あれ、ほんとだよ、寺田さんの旦那だ」

三次郎は、包丁を置いて、二階の小部屋へあがって行き、寒いので日中から泥行火を抱いてばかりいる老密偵・相模の彦十へ、

「下に寺田の旦那が来ていなさるよ」

と、声をかけた

彦十は掻巻(かいまき)にくるまったまま、

「妙だぜ、そいつは・・・・・・寺田の旦那、今日は非番のはずだよ」

彦十は、寺田同心と組んで、これまで何度が探索(さぐり)をしたことがあるので、寺田金三郎の日常はよく知っていた

「あの人の兄(あに)さんが、寺田又太郎といってね。去年の・・・・・・そうさ、ちょうど今頃だ。鹿熊の音蔵という盗人を見つけ、後をつけたとおもいねえ」

「ふむ、ふむ・・・・・・」

「ところが、鹿熊の音蔵のほうが一枚上手でな。寺田又太郎さんは、中目黒の竹藪までつけて行って、そこで音蔵に殺されなすった・・・・・・」

そのとき、瀕死の重傷を負って竹藪に倒れていた寺田又太郎を発見したのは。土地(ところ)の百姓であったという

又太郎は背中、胸、腹に五ヵ処の傷を負っていた。これはどう見ても一人の犯行ではない

又太郎の変死によって、弟の金三郎が寺田家をつぎ、ひいては兄同様の役目についたわけである

彦十は、板場へ下りて行き、格子の間から入れ込みの一隅にいる寺田金三郎を見た

当年二十五歳。亡兄・又太郎より五歳下の独身(ひとりみ)だが、麻布飯倉片町にある念流・笹原喜十郎の道場へ十歳のときから通いつめ、すでに免許をゆるされていた

背丈は尋常だが、いかにも剣士らしく引きしまった体躯のもちぬしで、眉のあがった精悍な風貌をしている。その躰つきや、浅ぐろい顔だちなどが、亡兄に、

「似ているともなく似ている・・・・・・」

のである


さて・・・・・・

あまり好きだとはおもえぬ酒をのみながら、黙念と時間(とき)をすごしている寺田金三郎を見た相模の彦十は、三次郎同様に、

(こいつは、いつもの旦那じゃねえ)

と、おもった

金三郎が立ちあがったのは、このときである

小女に勘定をはらい、外へ出て行った

「ちょいと、出て来る」

そこにあった三次郎の半纏をつかんだ彦十は、三次郎にこういって、裏口から出て行った

金三郎は竪川辺りの道を、どこまでも東へすすむ。いつもの市中巡回の着ながし姿で、外へ出ると、金三郎は懐中から頭巾を出してかぶった

三ッ目橋のたもとをすぎ、橋川との合流地点に懸かっている北辻橋をわたり、四ッ目橋の北詰をすぎると、深川北松代町の代地の一角に、

〔居酒屋・山市〕

と、軒行灯を掛けた小さな居酒屋がある

寺田金三郎は、そこへ入って行った

この夜、山市は店を開けていなかった。軒行灯の灯りも消えていたのである

金三郎が外から戸障子を叩くと、戸が開き、六十がらみの老爺が顔を出し、金三郎を中へ引き入れた

(いってえ、何だろう?)

金三郎の後をつけて来た彦十の不審は、さらに、ふくれあがった

寺田金三郎が入って行って間もなく、山市の二階に灯りが入ったらしく、閉めきった雨戸の隙間から、それが洩れてきた

非番の日に、こんな外れの、しかも店を閉めている居酒屋へ寺田金三郎が入って行ったことは、たしかに解せぬことだが、相模の彦十は自分のしていることに馬鹿らしくもなった

苦笑して、立ちあがりかけたとき、黒い影が一つ、山市の戸口へ近寄って行くのを彦十は見た

ぶら提灯を提げているその町人ふうの男は、戸を叩かず、低い声が二言三言、何かいっているようだ

すると、戸が開いて、先刻(さっき)の老爺が白髪頭を突き出し、何かささやいた

男はうなずき、道を西の方へ引き返して行く

そのあと、老爺は戸口から外の気配を凝っとうかがっているようだ

老爺が戸を閉めるのを待ちかねたように、相模の彦十は道へ出て行った

前方に、怪しい男の提灯が行く。急ぎ足だが、夜道のことゆえ走っているわけでもなかった

提灯は北辻橋をわたり、三ッ目をすぎ、緑町四丁目の〔湊屋〕という鰻屋へ入った

すぐに彦十は、湊屋へ入って行った

顔なじみだし、彦十は勘定をためたこともない。板場で鰻を焼いている肥った亭主に酒をもらい、茶わんで二杯ほどのむうち、二階から先刻の男が下りて来た。顔は見ていないが、姿かたちを彦十は、はっきりと見おぼえている

男には連れがいた。連れは、二階座敷で男が来るのを待っていたらしい

頭巾をかぶっていて、羽織・袴のきっちりとした身なりをしている侍である。大小も立派なものを腰に帯していた

彦十は、裏口から飛び出して行った

そして裏道を居酒屋・山市目ざして小走りに走り出した。このあたりには、もう四十年も住んでいるだけに、五十をこえた相模の彦十だが、することなすことが、

「壺にはまってくる・・・・・・」

のである

三ッ目通りをこえたところで、横道から提灯を提げて出て来た侍が、

「おい、これ彦十、血相を変えて何処へ行く?」

声をかけてよこした

「あっ、銕つぁん・・・・・・」

この日の午後、長谷川平蔵は、入江町に屋敷を構える五百石の旗本・石川堂之助の父で、いまは隠居し、鶴斎と名乗っている人物の病気見舞いをしての帰り途だったのである

「長谷川さまよ」

と、彦十は平蔵の袖をつかみ、

「いま、はなしている暇はねえ。いっしょに駆けておくんなせえよ」

事情(わけ)はわからぬながらも、なんとなく長谷川平蔵、おもしろくなってきたようだ


実に、それは、ろくに彦十が語る間もなかった。駆けながら手短かにはなしはしたが、山市の前の材木置場へ隠れるか隠れぬかのうちに、怪しい男が急ぎ足でやって来た。いつの間にか件の侍と別れている

(おや・・・・・・?)

おもううちに、男は、またしても戸口へ身を寄せて何か合図をし、すると戸が開いて先刻の老爺が何かいい、戸を閉めた

男は、山市の前で、西の方へ向って、二度三度と提灯を振って見せてから、提灯のあかりを吹き消し、山市の横の路地へ身を潜めた

いよいよもって、面妖なことではある

「あの二階に、寺田金三郎がいるらしいというのか?」

と、平蔵

「いまの提灯の合図は・・・・・・?」

ささやきかわす間もなく、山市の戸障子が開き、人が出て来た

同心・寺田金三郎であった

金三郎は、見送りに出た老爺に何かいってから、うつ向きかげんに、腕を組んで西の方へ歩み出した。足どりが重い

見送っている老爺の傍らへ、路地に潜んでいた男があらわれ、何かいった

二人は山市の中へ入り、戸を閉めた

長谷川平蔵は彦十をうながし、道へ走り出た

山市の戸口へ身を寄せ、中の気配をうかがうと、間もなく、なんともいえぬ物音がきこえた

低くて、鈍い物音なのだが、異常であった

ついで、女のうめくような声が耳に入り、すぐに途絶えた

平蔵が、彦十へ、

「中へ飛び込め。手にあまったら、大声で人殺しとわめけ、叫べ」

いいざま、体当たりに山市の戸を打ち破っておいて、

「それ、行け」

彦十へ声をかけるや、身を返して、まっしぐらに。寺田金三郎の後を追った

走って行くうちに長谷川平蔵は、背後で、

「人殺し!」

と叫ぶ彦十の声をきいた

と・・・・・・

前方に刃と刃が噛み合う音も聞いた。。。。


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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寺田又太郎/源三郎(鷲尾功)

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おせつ(山下智子)

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おまさ(梶芽衣子)

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木村忠吾(尾美としのり)

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久栄(多岐川裕美)

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市兵衛(中井啓輔)

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お篠(山本郁子)

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鹿熊の音蔵(浜田晃)

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矢島孫九郎(堀田真三)

松倉の清吉(伊藤高志)
小吉(南宗一郎)

〔盗賊〕
・鹿熊の音蔵:鹿熊の音蔵について、舟形の宗平老人は、平蔵に、「うわさには何度も聞いております。血を見なくてはおさまらない急ぎばたらきをする・・・・・・いえ、それも大がかりな押し込みばかりで、めったやたらにはいたしませんので、さようでございます、なればこそ足取りがつかめませぬし、流れ盗めの盗人は決して使いませんので、うわさを耳にしても、いったい、どんな奴なのか、さっぱりわからなかったので・・・・・・はい、そのとおり。それはもう、私が盗めばたらきをしていたころのはなしでございますから、大分に前のことで・・・・・・」と、いった

・舟見の長兵衛:三年前におせつが引き込みの連絡をしていたお頭

・堀切の彦六:寺田又太郎附きの密偵。もとは盗賊で、五十がらみの無口な男。盗賊だった頃、神子沢一味の盗めを二度ほど手つだったことがある

・神子沢の留五郎:小娘だったおせつが引き込みをしていた盗賊

・宅十:舟見一味の盗賊。おせつの夫、すでに病死している

・市兵衛:山市の亭主。おせつの父親の兄にあたる。父親も、この伯父も盗賊であった


〔商家〕
・〔湊屋〕:緑町四丁目の鰻屋。小体な店だが、土地ではちょいと知られていて、彦十も、長谷川平蔵から「おい、彦よ。たまには精をつけて来いよ」と余分の小遣いをもらったときなど、よく食べに来る。二階に小座敷が三つ。下の土間に、せまい腰掛けで、酒食が出来るようになっている

・〔さなだや〕:本所の枕橋の北詰にある蕎麦屋。老夫婦がやっている店で、西は大川。東は道をへだてて水戸家の下屋敷というしずかな場所にあり、二階に小座敷が一つある。おせつと金三郎が其処へあがった

・中村屋多兵衛方:茅場町薬師前の薬種問屋。おせつが、ここへの押し込みの連絡をつけているところを、通りかかった彦六がみかける

・栄左衛門方:東海道品川宿二丁目の質屋。江戸における鹿熊の音蔵の本拠


〔料理帳・本〕
食べるものは二日分ほどを、彦十が五鉄へ受け取りに行く。そこはさすがに三次郎がこころをこめたものだけに、大きな重箱三つへ、ぎっしりとつまった握り飯や煮物なども、ただものではない。握り飯にしても、味噌をぬって軽く焙り、胡麻をふりかけたり、刻み沢庵を胡麻醤油にまぶしたものを飯の中へ入れたり、焼海苔をたっぷりと巻いたりしてあるものだから、
「この次は、どんな弁当かな?」
酒井たちも、張りをうしなわずに粘れたのであろう


〔料理帳・ドラマ〕
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軍鶏の臓物鍋、平蔵、彦十とおまさ、五鉄にて


〔ドラマでのアレンジ〕
原作では寺田金三郎だが、ドラマでは何故か源三郎になっている。また、原作では相模の彦十ひとりの行動が、ドラマでは彦十とおまさの二人になっている。

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純と愛

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NHKの連続テレビ小説

まきんぽの『梅ちゃん先生』はなんとなく見逃したけれど

今回は、、、見るゾと

『梅ちゃん先生』の余勢をかって高視聴率となりますやら。。。


jun&ai ep42

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宮古島の実家のホテルを継いで、生前おじいが経営していた頃の、お客さんが皆笑顔になる『魔法の国のようなホテル』を再建したかった純だったが、、、

父親の善行に猛反対されて、、、「それなら大ホテルの社長になってやる」と飛び出したはいいものの、、、

就職試験は落ちまくり、最後に残ったのは大阪のオオサキプラザホテルだった。。。

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狩野純(夏菜)
本編のヒロイン
長所:自分でアピールすることでしょうか?
短所:つい必要のないことを言ってしまう
嫌いな言葉:「固定観念」、「大人になれ」、「みんなやってる」
オオサキプラザホテルの面接で失敗するが奇跡的に採用される

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待田愛(風間俊介)
愛と書いて、いとしと読む
就職試験の時から純をつけ回す怪しいヤツ
純がオオサキプラザホテルに採用されたのを知り、アルバイトで厨房に入る
実は、人の本性が見えるらしく、純に対しては裏の顔が見えないため、つけ回していたらしい
本性が見えるのが嫌で、いつも下を向いてるため、人にぶつかってばかりいる

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狩野善行(武田鉄矢)
純の父親
大阪の仕事で失敗したため、不本意ながら、妻の実家の宮古島に移り住み、義父のサザンアイランドホテルを継ぐが、経営はうまくいっていないらしい
ホテルを継ぐのは息子の正、女の純が大学に行く必要があるかという古い考えの持ち主
純との仲はうまくいってない
話す言葉は大阪弁

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狩野晴海(森下愛子)
純の母親
宮古島出身で土地の方言を話す
男どもが蜘蛛を怖がる中、平然と処理する肝の太さがある
純の理解者

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狩野正(速水もこみち)
狩野家の長男
父母と三人でサザンアイランドホテルをきりもりしている
話す言葉は共通語

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狩野剛(渡部秀)
一番下の弟
現在二浪中にもかかわらず、勉強しているそぶりがまったくない

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大先真一郎(舘ひろし)
オオサキプラザホテルの社長
入社式の挨拶で、純が「社長になりたい」と面接で言ったことを暴露したため、純は「社長」というあだ名で呼ばれるようになってしまう

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水野安和(城田優)
オオサキプラザホテルのコンシェルジュ
従業員の中ではまっとうと純に言わしめた

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米田政国(矢島健一)
オオサキプラザホテルの宿泊部長
面接中にも関わらず着信音をならしたり、携帯に出たりしたため、純からケータイじじいと呼ばれる

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露木敏哉(や乃えいじ)
オオサキプラザホテルの料飲部長
面接中、あたりはばからず何度も大きなくしゃみをしたため、純からくしゃみじじいと呼ばれる


新人女優さんと思いきや、尾野真千さん以来、3連続で既成の女優さんの起用

大物俳優さんのナレーションが定番でしたが、今回は主人公がついナレーションやってしまってるし、、、

父親役の武田さんが毎週四文字熟語を吐くという趣向があるみたいですな

ちなみに第1週の熟語は【傲岸不遜】でした

ちょいと楽しみです

宮古の海はきれいです

では、、、、また!!!!

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谷中いろは茶屋

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谷中・いろは茶屋〔やなかいろはぢゃや〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十三年九月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(二)』
TV 第三シーズン54話『谷中いろは茶屋』(92年2月5日放送)
脚本:井手雅人
監督:井上昭

鬼平犯科帳〈2〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈2〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第7・8話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第7・8話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
「もう、これ以上、とてもつづくものではないよ。ああもう、どうしたらいいかなあ・・・・・・」

若いさむらいは、ぽってりとした色白のやわらかい裸体の汗をぬれ手ぬぐいでふきながら、

「ああもう、・・・・・・こ、こうなるとまったく、押しこみ強盗でもやって見たくなる」

物騒なことを泣くような甘え声でいい、手ぬぐいを投げすてるや、

「これが最後だとおもうと、もう何度でも、何度でも、何度でも・・・・・・」

床の上へ横たわり、こちらを見上げている妓(おんな)の細い躰へおおいかぶさっていった

ふくよかな若者とは対照的に、妓のあさぐろい肉体はあくまでも細っそりと引きしまってい、わずかなふくらみを見せている乳房のあたりへ女ざかりの凝脂の照りが、ねっとりと浮いている

「ああもう、これきりだ。ああもう、つづくものではない・・・・・・」

「けれど忠さん。もし、つづいたらどうするえ?」

「つづくはずがない、遊びの金がないのだものな」

「そのお金(たから)がつづいたら?」

梅雨もあがった午後の夏空は、まっ青に晴れあがっていた

ここは〔いろは茶屋〕とよばれる岡場所であって、貞享の時代(ころ)から谷中・天王寺門前にひらかれた遊所だ。はじめから上方の業者が多く、だから万事が上方ふうのおっとりとした雰囲気があり、いまも娼婦たちの多くは上方や近江のあたりの出だということである

ふかい木立と寺々の甍(いらか)に埋もれた土地(ところ)の遊所だけに、

「一度、いろは茶屋へ足をふみこんだら、足がぬける前に腰がぬけてしまう」

だそうな

だが、この若いさむらいは足腰がぬけるまでもなく、遊び金につまりつくしたものらしい

まだ二十四歳の独身(ひとりみ)であるし、これほどまで妓へ打ちこんでいるのだから、ここまで行きづまってくると、彼がいま口走った「こうなれば押しこみ強盗でも・・・・・・」という気持になるのもむりはないところだが、さずがに〔忠さん〕そこまでは落ちきれぬところがある

というのは彼の正体、世の悪漢どもを恐怖させている鬼の平蔵の部下で、火付盗賊改方の同心・木村忠吾であったからだ


この日

お松は、木村忠吾にこういったものである

「あと一月ほどは、忠さん大丈夫。茶屋の勘定(しまつ)は、あたしがするもの」

「でもお前、いったい、その金をどこから?」

忠吾が訊くと、

「どこからでもいいじゃありませんか。まさかに、押しこみをかけたお金じゃありませんもの。ふ、ふふ・・・・・・」

お松は相手にならなかった

実は、

「お前の好きな男のためにおつかい」

こういって金十両を、ぽんと、お松にくれた別の客がいたのである

この不景気な世の中に物好きな客もいたものだが、この客も、実は、木村忠吾と同じころから〔いろは茶屋〕へ姿を見せはじめた五十男で、うわさによれば、なんでも武州・川越の大きな商家の主人だということだ

この旦那、菱屋では〔川越さん〕で通っている

でっぷりとした、いかにも大様な風貌で、あまりにも細い眼の、

「目の玉がどこにあるのだろうねえ」

と、菱屋の妓たちが陰口をきくほど、川越の旦那が笑うと、両眼がしわになってしまう

お松を相手にするときも、五十男にはめずらしい淡白さであった。初めて菱屋へあがった日には酒をのんだだけであっさりと帰った。娼婦というものは男と寝ることが商売なので、つまりそのことに飽きつくしている。だから、こうしたあつかいをされれば否応なく好意を抱いてしまうものだ

「お前の好きな、あの御浪人は、このごろお達者かね?」

川越さんに訊かれたとき、

「でも揚代が、もうつづかなくて・・・・・・」

さびしげに、お松がこたえた

すると、

「そりゃあ気の毒、わしは間もなく川越へ帰らねばならぬ。しばらくは江戸へも来られまい。ま、長々と世話になったお礼というほどのものでもないが・・・・・・この金を好きな男(ひと)のためにつかっておくれ」

すぐさま金十両を出して、お松へよこしたものである

「そうか・・・・・・そりゃどうも、奇特な人がいるものだな」

このことを、お松からきいて木村忠吾は、

「それではまだ、ここへ来られるのだな」

「よかったねえ、忠さん」

「よかった、よかった」

忠吾は、万事にこだわらない。実に得な性分といわねばなるまい

「おれというやつは、わるいやつさ」

脳裏の片隅で、御頭・長谷川平蔵の温顔を意識しつつ、忠吾はお松のしなやかな躰を抱きすくめにかかった

「あれ、痛い・・・・・・いやですったら、そんなに強(きつ)く・・・・・・」

夏の陽ざかりに二階座敷の障子をしめきって、お松も忠吾も汗を浮かせ、ふざけはじめる

ふざけながら、お松が、こんなことをいった

「悪いといえばねえ・・・・・・川越の旦那が、こんなことをいってましたっけ」

「どんな?」

「人間というものはねえ・・・・・・あれ、くすぐったい、いやですよ、そんな忠さん・・・・・・」

「人間というものは?」

「人間という生きものは、悪いことをしながら善いこともするし、人にきらわれることをしながら、いつもいつも人に好かれたいとおもっている・・・・・・」

「なるほどなあ・・・・・・」

このとき木村忠吾はお松からはなれ、下帯ひとつの裸体で床の上へあぐらをかき、妙に、川越の旦那がいったことばに感心をしていたようである


そのころ・・・・・・

〔川越の旦那〕は谷中の寺町が本郷へ下ろうという善光寺坂の中ほどにある数珠屋の店で、主人の乙吉と語り合っていた

「今日は、これから?」

「ふふん、野暮なことを聞くものではねえ」

「天王寺のいろは茶屋で?」

「なに、今日が最後よ」

「そんなに、いい妓なので?」

「ほれ、二十何年も前に、おれが上方で血頭の丹兵衛どんのお盗(つとめ)をたすけていたとき、伏見で熱くなった妓がいたろうによ」

「え・・・・・・あの、お松といいましたねえ」

「そうよ、名前も同じなら、年ごろ二十年前のあいつと同じような・・・・・・なに、女の躰にのぼせているのではねえ。なんだ彼だと親身にあつかってくれるので、ちょいといいこころもちなのさ」

「そいつがお頭の弱えところだ」

「知っていらあな。わきまえているから安心しねえ。こう見えても荒い盗では仲間内にも知られた墓火の秀五郎よ」

川越の旦那・・・・・・いや兇盗・墓火の秀五郎はこういって店の土間へ立ち、ぜいたくなこしらえの煙草入れを帯へ差しこむと、

「手下にいっておいてくれ、今度のお盗にはごってりと血がながれるとな」

油屋を出た秀五郎は、いろは茶屋をさして坂をのぼりきり、八軒町の角を左へ曲るつもりらしい。この八軒町へかかる手前に一乗寺横の細い路が、これも茶屋町へ通じてい、秀五郎がこの細路へさしかかったとき、お松と別れて役宅へ急ぐ木村忠吾が着流しに編笠をかぶった浪人姿で細路から善光寺坂へあらわれた。。。


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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墓火の秀五郎(長門裕之)

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お松(杉田かおる)

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木村忠吾(尾美としのり)

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佐嶋忠介(高橋悦史)

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沢田小平次(真田健一郎)

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小房の粂八(蟹江敬三)

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乙吉(松山照夫)

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お徳(正司花江)

国太郎(野口寛)
いろは茶屋女将(山口朱美)
文治(河本忠夫)
定八(山下悦郎)
伊佐蔵(野々村仁)
吉兵衛(東田達夫)

〔盗賊〕
・墓火の秀五郎:ここ一年ほどの間に二、三度、江戸市中の商家を荒し、そのたびに被害者を皆殺しにしている兇盗。〔川越の旦那〕

・油屋乙吉:墓火の盗人宿・油屋という数珠屋の主人。足が不自由らしく、かなりの跛をひく。土地の者は、「善光寺坂のびっこ数珠屋」などど呼ぶ

・定八:油屋の店番から台所仕事いっさいをやってのける

・天神の文治:墓火一味。奥州・仙台の城下で大仕事の下準備をしていた

・伊佐蔵:墓火一味。文治とともに仙台に潜伏


〔商家〕
・油屋:善光寺坂の中ほどにある数珠屋。墓火の秀五郎の盗人宿

・〔小川屋〕:武州・粕壁の旅籠。墓火の秀五郎の根城

〔料理帳・本〕
温和しい性質だし、芝・神明前の菓子舗〔まつむら〕で売り出している〔うさぎ饅頭〕そっくりだというので、口のわるい与力や同心たちは、忠吾に面と向かってあからさまに、
「兎忠さん」
などと、よぶ


〔料理帳・ドラマ〕
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里芋の煮物ほか、墓火の秀五郎とお松、いろは茶屋にて

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鯛の刺身ほか、忠吾とお松、いろは茶屋にて


〔ドラマでのアレンジ〕
ドラマでは墓火の秀五郎と忠吾がいろは茶屋で酒を酌み交わす場面があり、お互いを「川越の古狸」、「兎忠」と呼び合います。また、秀五郎の息子が生きていれば、ちょうど忠吾と同じくらいだったという設定が、ラストの斬り合いのシーンを生んでいます。原作では、二人は語り合うことはなく、ラストのシーンもありません。

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妙義の團右衛門

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妙義の團右衛門〔みようぎのだんえもん〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和五十四年一月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(十九)』
TV 第三シーズン55話『妙義の團右衛門』(92年2月12日放送)
脚本:谷口喜羊司
監督:高瀬昌弘

鬼平犯科帳〈19〉 (文春文庫)

鬼平犯科帳〈19〉 (文春文庫)

  • 作者: 池波 正太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 文庫



鬼平犯科帳 第3シリーズ《第7・8話収録》 [DVD]

鬼平犯科帳 第3シリーズ《第7・8話収録》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • メディア: DVD


〔本のおはなし〕
いかにも、田舎から出て来た江戸見物の老爺(おやじ)と見えたのに、茶代をはらって立ちあがったとき、

「ちょいと、さわってごらん」

耳もとでささやいたかとおもったら、あっとおもう間もなく、その老爺の指先が着物の八ツ口からすべり込んできて、

「あれ、くすぐったい・・・・・・」

女が胸を押さえたときには、老爺の手が素早く引き込められ、

「気が向いたら、神明様の前の弁多津へおいで、五ツごろまで待っていますよ。わしの名は吾作じゃ」

小声で言った老爺は、水茶屋の外へ出て行った

茶屋女のお八重が、そっと、胸もとを探って見ると、まさに一両小判が二枚。当時の二両は庶民一家の暮しが三月は楽に立つほどの金額であった

老爺ながら肥って血色のよい、六尺に近い大男なのだが、木綿の着物・羽織を身につけ、紺足袋に草履という姿(いでたち)なのだ

女坂を下りながら、老爺は、あたかも、お八重が見送りに出たことを予期していたかのように振り向き、にっこりと笑って見せ、手を振った

(それにしても、年を老っているけれど、まるで相撲取りのように大きいじゃないか。あんな大きいのに、のしかかられたら、私の細い躰が粉々になってしまやしないかしら・・・・・・?)

何やら鼻息をあらげて、お八重は二枚の小判をつかみしめた

一方、老爺は女坂を下り切って、総門の手前の大鳥居を潜った

そのとき、老爺は、総門の方を見やって、おどろきとなつかしさが綯(な)い交ざった表情を浮かべた

いましも、総門を入って来た年寄りは、背丈は高いが細身の躰で、これが鳥居の下に立ちどまった田舎老爺を見るや、

「おや、おや・・・・・・お久しゅうございますなあ」

この年寄り、いまは火付盗賊改方の密偵となっている馬蕗の利平治である

「五年・・・・・・いや、六年ぶりかのう。ともかくも、此処では、はなしもできぬ。お前、何ぞ他に用事があんなさるか?」

「いえ、別に、通りかかったので愛宕さまへお詣りをとおもったもので・・・・・・・」
「それなら、此処から拝んでおきなされ。久しぶりじゃ。はなしがしたい。ま、ついて来なされ」

大男の田舎老爺が、先に立って総門を出た。この田舎老爺、水茶屋の女には「吾作」などと、おもいつくままに名乗ったが、実は、

「妙義の團右衛門」

といい、上信二州から越後へかけて、大仕掛けの盗みをはたらく盗賊の首領で、手下の盗賊は三、四十名におよぶはずだ


その日の夜ふけに・・・・・・

清水門外の火盗改方役宅の、長谷川平蔵の居間へ通された馬蕗の利平治が、妙義の團右衛門に出会ったことを、包み隠さずに告げるや、

「よう、申してくれた」

平蔵が軽く頭を下げて、

「お前は、妙義の團右衛門に義理立てをせぬでもよいのかえ?」

利平治は、一瞬の沈黙の後に、

「ございません」

低いが、きっぱりとした声でこたえた

(長谷川さまの御為になることなら、わしゃあ、地獄に落ちてもいい)

この覚悟が、しっかり据わっていたからこそ利平治には、いささかのためらいもなかったのではあるまいか

「では、お前が妙義一味へ加わって、いちいち、知らせてくれるのじゃな」

「はい」

「長谷川さま、いま一つ、大事がございます。この御役宅に、妙義一味の者が潜んでいるのでございますよ」

「まことか?」

先刻、弁多津の二階座敷で、妙義の團右衛門が、

「ところで利平治どん、わしはな、鬼の平蔵の鼻をあかしてやるつもりで、びっくりするようなことをしてあるのじゃ。盗賊改メの役宅にな、こっちの手の者を入れてあるのじゃ」

「おどろきました」

嘘いつわりもなく利平治がこたえると、

「飯炊き男にな、一人、入れてあるのじゃわい」

「役宅の・・・・・・?」

「二年前からのう」

二年前に役宅の下男として雇われている竹造という三十男が、それであった


はなしを前へもどしたい

つまり、芝の神明社・門前の料理屋〔弁多津〕から、馬蕗の利平治が立ち去ったときのことだ

妙義の團右衛門は、利平治を店先まで送って出た

「では、明後日の暮れ六ツに、もう一度、此処へ来ておくれ」

外へ出た利平治を、弁多津の裏口から出て待ちかまえていた中年の商人ふうの男が尾行しはじめた

利平治は、これに、まったく気づかなっかたのである

この男は〔鳥居松の伝吉〕といい、妙義の團右衛門の古い配下であった

馬蕗の利平治は、かつて抜群の嘗役であったけれども、人を尾けたり、人から尾けられたりした経験は、ほとんどないといってよい

それに、妙義の團右衛門が、ふと思いついて配下の者に自分を尾行させようなどとは、おもってもみなかった

それでも充分に気をつけながら、清水門外の役宅へもどったわけだが、これを、鳥居松の伝吉にまんまと突きとめられてしまったのだ

伝吉も、これにはおどろいた

だが、妙義の團右衛門の驚愕は、さらに大きかった

馬蕗の利平治を尾行させたのは、

「お前、いま、どこに住んでいるのじゃ?」

と、自分が尋ねたとき、利平治が一瞬ためらったのちに、弥勒寺前の茶屋の厄介になっているとこたえたのが、微かに團右衛門の胸の底へ引っかかっていたのやも知れぬ

それにしても、だ

まさかに利平治が、盗賊改方の役宅へもどって行こうとは、團右衛門の想像に絶したことであった

「ようも、ようも・・・・・・利平治め、ようも、わしを謀りおったな」

血がのぼって真っ赤になっていた團右衛門の布袋顔が、激怒の極に達して蒼ざめてきた

大きな両眼が爛々と光り、鼻息が鞴(ふいご)のように鳴り、手にした金火箸を二つに折り曲げてしまった。。。


〔主な登場人物〕
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長谷川平蔵(中村吉右衛門)

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妙義の團右衛門(財津一郎)

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高萩の捨五郎(菅原謙次)

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天野甚造(御木本伸介)

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沢田小平次(真田健一郎)

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竹造(うえだ峻)

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松代屋のお峰(桃山みつる)

鳥居松の伝七(江藤漢)
沼田大七(千波丈太郎)


〔盗賊〕
・高窓の久兵衛:馬蕗の利平治が属していた盗賊の首領

・お兼:三倉屋方へ引き込みとして入れてある女賊。盗賊改方に入り込んでいる竹造の女房

・沼田大七:妙義の團右衛門配下の浪人くずれの盗賊


〔商家〕
・三倉屋儀平:浜松町三丁目の蝋燭問屋。〔嘗役〕だった頃の馬蕗の利平治が妙義の團右衛門に絵図面と覚え書を売り渡した

・増田屋久兵衛:上州・高崎城下の銅物商人。妙義の團右衛門の変名

・松島屋:芝の湊町の船宿。妙義一味の盗人宿

・池田屋八郎次方:信濃の善光寺町の呉服問屋。妙義の團右衛門がかねてから引き込みを入れてある

・〔植半〕:弥勒寺門前・お熊婆の茶店の隣の大きな植木屋

・〔網半〕:湊町の船宿・松島屋と道をへだてた筋向いの釣道具屋

・辰兵衛方:浜松町三丁目の蝋燭問屋・三倉屋儀平方の筋向いにある袋物師

・〔芳野〕:池ノ端仲町の出会い茶屋


〔料理帳・本〕
浅草や深川を下賤というのではないが、何とはなしに、軒をつらねる茶店や料理屋にも落ちつきがあって、その中の〔弁多津〕という料理屋は小体な店構えだが、
「冬になると弁多津の、のっぺい汁が恋しくなる」
と、盗賊改方の長官・長谷川平蔵も年に何度かは足を運ぶらしい。
いろいろな野菜に、むしり蒟蒻、五分切りの葱などを、たっぷりの出汁で煮た能平汁は、どこの家でもつくれるものだが、さすがに、これを名物にするだけあって、
「ここの能平汁で酒をのむのは、まったく、たまらぬのう」
と、妙義の團右衛門が、馬蕗の利平治にいった
沢田小平次は、まだ、溜部屋へもどって来ない
「あいつ、飯の御相手までも・・・・・・」
と、くやしそうに呟き、忠吾は豆腐と油揚げを刻み込んだ汁へ箸をつけ、
「おれには、酒がつかない」
と、こぼした


〔料理帳・ドラマ〕
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團右衛門と捨五郎、弁多津にて

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天野と平蔵、弁多津にて

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捨五郎と彦十、五鉄の二階 彦十の部屋

〔ドラマでのアレンジ〕
原作の馬蕗の利平治がドラマでは高萩の捨五郎になっており、『盗賊二筋道』での捨五郎の枇杷の木の杖のエピソードが効果的に使われている。原作での利平治は弁多津からの帰りを尾行され密偵であることがばれるが、ドラマでの捨五郎は役宅には向かわず、五鉄の二階に戻っており、利平治から捨五郎に変わったことにより細部が微妙に異なっている。

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ブログ最初の記事

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6月頃にSo-net事務局から連絡がありました

J●SR□Cさんからクレームが来たそうで、

一旦、鬼平記事を除いて下書きに移しました

現在、ぽちぽちと歌詞を削除して復活させておりますが。。。

この最初の記事もそんな中のひとつです

アイアン・キング

2006年10月1日アップですから、もう6年も前になるんですなあ

記事の中で岡崎友紀さんと夏純子さんを紹介しておりますが、、、

最初なんで、当然おまけはなし

最初におまけがついたのは、、、

宇宙刑事ギャバン

の記事でした

ギャバン、、、生誕30周年記念ということで10月20日からTHE MOVIEが公開されておりまする

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それはさておき、記事のほうですが、数行の余白があって、スクロールしていくと、おまけが見れるという構成でした

が。。。

当時のPLAYLOG事務局からクレームレターが来まして、

山吹屋お勝

該当記事を下書きに

当時はムラだったので、波及範囲も狭かったか(笑)

現品処置で済ませました

他の記事に対するクレームはなく

FC2におまけだけのブログをたてるのであった

なにせ、FC2はアダルトのジャンルがありますから


その後、、、

岡崎友紀さんのおまけはつけれましたが、夏純子さんにいたっては機会がなかなかなく。。。

こんにちにいったておる次第であります、、、、では!!!!!また!!!!!

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